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HappyEverAfter

花沢類x牧野つくし

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Happy Ever After 6
happyeverafter06

6.

土手沿いの草花を視界の片隅に入れ、自転車のペダルをキコキコ言わせ風を切る。
すごく気持ちいい春の終わりの午後。

白くて可愛い野草花や鏡のように空を映し出す川面、ありふれたそんな風景ともずいぶんご無沙汰だった。
ポッカリ空いた対岸の空地から、子供達が集まりキャッキャと遊ぶ声が聞こえる。

いいな、楽しそう。。。

ランドセルを放り投げ、空が茜色に染まるまで遊び呆けた小さい頃を思い出す。
誰かが考えた新しい遊びに夢中になって、他とは明らかに違う空気がそこにはあって、また明日ね~ってバイバイするとリセットできる単純さもそこにはあった。

あの優しい日々に似たこの空気に、なんだかセンチメンタル気分だ。

空も風もなんて優しいんだろ、時間の流れまで悠々と感じる。
自然と口元をニンマリしながら、ふと川面を眺め見た。

浮き島で羽を啄ばむ鳥に目が行き、伴走してるのも忘れ、一瞬トリップしたその隙だった。


「わわわっ!・・・」

タイヤが何か固形物に当たった!
砂道をズリリと自転車ごとよろめいて、ヨロヨロヨロヨロ・・・横転寸前でなんとか片足着地し、膝を擦りむく難を逃れたけれども。
石じゃないね・・何、携帯が?・・・誰かの落し物?!
自転車を停めて、いそいで前方を走る友にストップの声をかける。


「る~い~、ストーップして~!!」

10メートル先から振り返った類はジャージにロンT姿、普通なのに目立ってるよ。
格好良いモデルみたいにすっと立つイケメンだね。
そりゃ、英徳でも無愛想なくせ人気の高かった花沢類なんだし。
目下、彼は牧野つくし構想:体力づくりプログラム実践中でランニング消化中なわけだけど、しばしタイムだ。


携帯を拾い上げ、一応、連絡先とか無いか外観チェック。
まさか、名前なんて書いてるはずもないんだけど、ストラップも付いてないし。
さて、どうするか・・・。

スッスッ。

「なに?どしたの?」

戻って来た類の息は荒く、額には薄っすら汗が浮かび、前髪もフワフワ空を浮かんでるのと、後ろへ流れてるのと半々状態。
類の家からだと、もう10キロくらい走ったもんね。


「それ、誰の?」

「わかんないから、困ってるんじゃない。
ここに落っこちてて。」

「拾ったの?」

落ちてた箇所を指差して、危うく転ぶところだったことは内緒にする。

「どうしよう、警察に届ける?落とし主さん、携帯なくて困ってるよね。」

「わざわざ?交番探すの?」

「落し物ごときで110番できないでしょ、私達が行かなきゃ。」

「元に戻しておけば?
すぐに取りに戻って来るかも知れないよ。」

確かに類の言う通り。
道の端っこならいいかも?でも、無鉄砲な子供もいるわけで、ズリリときて怪我したら今度は私のせい?


「戻すっていっても、棚があるわけじゃないし。
やっぱり交番かな?」

「じゃあ、開いてみたら?連絡つくかも。」

「それ、抵抗ある・・・類、お願い。」

シルバーの携帯を類にお任せとばかり差し出した。

「え?俺はわけわかんないのはパス。」

言いながら、胸の前で手をパタパタ振る。

「もう冷たいな~、類は。」

「なら、牧野がやれよ。」

「・・・それは~。
ホントに持ち主、戻ってこないかな?」

そうつぶやきながら、あたりをグルリと見回しても、ノンビリ歩くおじいさんと親子連れしか見えない。
再び携帯を睨みつけ、携帯を開くかどうか思案していた。
親切な人なら有難うって簡単な話だろうけど、個人情報管理がうるさい世の中、取り扱いも気を遣う。

「クスッ・・・ならさ、ここで持ち主が来るまで待ってよ。
気付いたら戻ってくるでしょ。
休憩・休憩。」

「はい?」

「ホラっ。」

類は自転車を引きながら、スタスタと川に向かって下りて行き、土手から遠くない所で止まった。
そして、来いよ!って頭を斜め振りして合図する。

あんた、そんな悠長な・・・。

でも、まあ今日は特別気持ちのいい午後だし、たまにはのんびりするのもいいかも。
自転車の横に二人並んで腰を下ろすと、カバンからタオルとボトル・ウォーターを取り出し類に渡す。
そして、そそくさ膝を抱えて足元の草を撫でてみた。


「ふーっ、こういうの久しぶりだわ。」

「こういう所にいっぱい生えてくるんでしょ?土筆(つくし)って。」

おもむろに類が聞いてきた。

「うん、雑草だからね、鉢植えとかは似合わない。
皆でね、こういう所にやって来て、土筆採りして家で食べたこともある。
共食いだって、パパに言われながら・・・ははっ。」

「土筆って・・・マジ食べるの?」

「そうよ、ママが御浸しにしてくれた。
フン!どうせ、粗食ですよ。」

へえ~と感心したような表情のまま、首にかけたタオルで横髪を掻きあげながら汗を拭き、ボトルの水をゴクゴク飲んで、小さくふう~って一息つく。

「家族みんなで土筆採り?・・・クククッ、牧野ん家らしいや、楽しそ。」

さらに、タオルで頭をゴシゴシ拭くから、汗と柑橘系のコロンが混じった香りが漂ってきた。
思いの外、なんだか男臭くて、思わずドキッ・・・!!
やだ、今さら、ドキリなんて///。


「牧野。」

「うん//?」

「飲む?喉渇いたでしょ?」

類が口をつけたばかりのボトルを私の目先に掲げ、聞いてくる。
ややあって、何かを察したのか、タオルで飲み口をキュッと拭き再び差し出した類。

「遠慮なくドウゾ。」

「あっ・・・うん、サンキュ。」

受取ったボトルの水は乾いた喉を潤してくれた。
友達なんだし、意識せずに飲めるはず・・・なのに、やっぱり異性だからかな、不必要なモヤモヤが邪魔して、変な気持ちになるよ。
類が汗なんか匂わせるからだ。

「ご馳走様。」

草の上にボトルをそっと置いた。

「牧野と間接キスしよ。」

そういって、私が飲んだばかりのボトルを手に取り、遠慮なくゴクゴク飲み始めた。

「//もう、ヤダ、類~そんな事言うかな。
子供!ガキ! 早く大人になれ!まったく。」

「はははっ、牧野、さっき意識してたでしょ。」

「!?////。」

「顔が赤くなってる・・・クククッ。」

「怒るよ!」

「ごめんごめん・・・おしまいね、もう、言わない。」

片手を上げたかと思うと、そのまま両手をバンザイし大きな伸びを一つ。
そして、そのまま後ろへどっかと寝そべった奴。
もう、からかうだけからかって、逃げるの早いんだから。
子供みたいに自由な大人、20歳(ハタチ)になっても類は変わらない?

「うわっ、雲がスゲー速さで流れてる。
牧野も横になってみな、空が目の前にくるから。」

カサカサ・カサカサ・・・横になると、草の音が耳にこそばい。
でも、それより見上げた空には感動した。

「ホントだね、結構速い!
空ではあんなダイナミックなことになってるのに、意外と人間って気付いてないもんだよね。」

早送りのように、変幻自由に形を変える雲を見つめてると、圧倒的なその大きさに身体ごと吸い込まれ流されてしまうような感覚を覚える。


「人間なんてちっぽけで、格好つけてもバカらしいよな。」

類の言葉が心にストンと入ってきて、名言だと思えるよ。

「これいい!久々、こういう気持ち。
地球規模で考えたら、人間なんて泡粒みたいなもんだし・・・人生泡のごとしって言うじゃん。
怒ったり、落ち込んだり、そんなこと小さなことに思えてくるよ。」

どうあがいたって、なるようにしかならないんだ、人間がすることだもん。


道明寺とのことでちょっと凹んでたことも、どうでもよくなった。
最後に話したのは3ヶ月前、あれからどうしてるだろう?相当忙しいに違いない。
例のミス・コネチカットの言い訳もまだ、こちらの近況報告もまだ、ずいぶん間があいちゃって、今回はさすがにこっちから連絡した方がいいかもって思ったものの、かけるタイミングを考えすぎて、かけづらくなった。
やっぱり恋愛に向いてない体質かって落ち込んだ。

考えてみりゃ、悩むって程のことでもなかったね、自然にしてればいいんだ。
遠恋は色々大変なのは覚悟してるし、そんなもんで考え込むのもおかしいね。

なんだかスッキリしたぞ、これも落し物のお陰かな。

「今日はこのルートで良かった~。」

雲を目で追いながら、実はこのところ凹んでたんだって白状しても、類もこの大空もうまく散らしてくれる気がした。

「牧野・・・。」

「ん?」

「眠い・・・ちょっと昼寝していい?」

「へ?」

隣を見ると、スーッと眠りの世界へ入っていく幸福な王子の横顔あり。
クスッ・・・類ったらどこでも寝ちゃう、人のこと言えないけど。
ただの川原なのに、ふかふかベッドに寝転んでるように見えるんだね。
そう思いながら、私も真似して一つ伸びしたら、とたんに睡魔に襲われウツラウツラしてたみたい。

Trurururuururu・・・Trurururururur・・・Trurururuururu・・・Trurururururur・・・


なんか鳴ってる?
携帯の呼び出し音?・・・あっ!
握り締めていた携帯が大きな音で鳴ってるのに気付き、飛び起きた。

「類!起きて!鳴ってる!どうする?」

まぶしそうに薄目を開けながら、とれば?なんて暢気に返事する類。

プチ

「はい、もしもし。」

相手はその携帯の落とし主だった。
紛失に気付いてあわててかけてきたらしく、私達がまだ見つけたその場所に居ることを伝えると、ひどく申し訳なさそうに何度もお礼を言われ、いそいで取りに来るという。

ややあって、汗をかきかきやって来た人は近くの不動産屋の人で、無くならなくて良かっただとか、いい人に拾われて良かっただとか、さんざん感謝され、もらい物だから遠慮なくと無理矢理お菓子の袋を手渡された。

何度もお礼を言われた後、最後に言われた言葉に類と二人思わず顔を見合わせ吹き出した。

「素敵なお二人にピッタリのマンションがあるんですがどうです?敷金無しのサービスしますよ。」

「・・・?・・・あのう~。」

「あれ?ご結婚はまだ?そうですよね、お若いですもんね。
イヤ~早とちりでスイマセン。でも、新居の節は是非うちにお世話させてください。
長年こういう商売やってるとね、どんなご夫婦かなんとなくわかってね、離婚しそうなカップルとかには、正直、いい所お勧めできません。
お宅さんらみたいに末永くお幸せそうなご夫婦には、責任持って探しますから!これもご縁ですよ、絶対ですよ~!!」


つづく

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