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33.
外に出ると、雨が土砂降りになっていた。
道明寺のお母さんに、優紀と和也くんの実家まで目をつけられて、心をちぎられる思いで別れを告げたあの日と同じ、冷たい雨。
ずぶ濡れになりながら、黒いフェンス横を小走りで歩いて帰った。
家に着くと、急いで自分の部屋のカーテンを閉め、携帯の電源を切り、ベッドにもぐりこむ。
まだ昼前だというのに、外は暗くて私にはちょうど良かった。
頭の中は、道明寺との思い出が次からぐ次へと廻って来る。
英徳高校時代、そりゃ、辛いことがいっぱいあったけど、道明寺と出会えて幸せもいっぱいもらって、皆と笑った思い出が走馬灯のように浮かぶ。
全ての外界と距離を置きたかった。
自己嫌悪の塊にどっぷりとはまって、こんな自分を見たくないし許せない。
いや、許すまい。
普通の恋愛をする資格は、私にはもうないよね。
一生独身で尼のように毎日すごせたら、この罪悪感も少しは薄らぐかもしれないけれど。
類も道明寺もいないところで、腰が曲がるまで過ごすに値する。
別の男を好きになるなんて、サイテー浮気女のすることだと思ってた。
そんなサイテーな自分に吐き気さえする。
道明寺のあの苦しげな声色と悲しげな瞳。
ごめん、本当にごめん。
道明寺が好きで好きで・・・なのに、自分の勝手で一方的に傷つけた。
こんなことになるなんて。
『もう消えてしまいたい。』
部屋にこもって4日目。
その間、進が何度も呼びに来たから、誰かから連絡があったようだけど、居留守をきめこんで誰ともコンタクトをとらずに過ごした。
けれども、いつまでもそうしている訳も行かず、携帯の電源を入れた。
何十件ものメッセージと留守電。
ほとんどがF4とT3から。
類と道明寺を除いて。
ずらりと並んだ差出名を見て、またオフにした。
重い足取りで登校した。
こんな日に限って、大学前の並木道で西門さんと美作さんに会ってしまう、ひどく因果な運命。
どんな顔して話していいのだか。
けれども、戸惑う間もなく、手を挙げて近づいてきた二人の勢いに自然と足が止まった。
「おおおお~、まきの~。お前、返信しろよな!!!生きてたのか??」
「で、類は?司は?」
「何があった??」
「はん??」
駆け込むように聞いてきたのは美作さんだ。
思わず、仏頂面でジロリと睨んだけど・・・えっ、ちょっと待って、今、なんて言った?
「お前、類と連絡とったか?」
「知、知らないけど、・・・何?」
顔を見合わせる二人。
「牧野、あれから司んとこ行ったろ?」
無言で頷いた。
「んだろ。そん時、類とも会ったか?」
無言で首を振った。
会ってないもんは会ってない。
「とすると、行き違いか。」
「みたいだな。でも、あいつら二人は会ったんだろ。」
「どういうこと?類が道明寺の家に一人で行ったの?」
「司んとこに牧野が拉致られたのを知って、類も行ったんだよ、司ん家。
でも、お前は居なかった。」
「うん、類は見てない。
ってか、別に拉致られたってわけじゃないよ。」
「まさか、司、逆上して、類を殺(や)ったんじゃないだろうな。」
「おい、総二郎、変なこと口にするな。
とにかく、類のやつ、自宅に連絡もなくずっと行方不明のままでさ。
ついに、昨日、親父さんが警察に捜索願いを出したんだ。」
ビックリして口がふさがらなかった。
「お前、本当に知らないのか?連絡は一度もしてない?」
慌てて携帯を引っ張り出して、オンにする。
「っケ・・・。こいつ、俺のメールをスルーしてやがった。」
確認したけど、やはり、並ぶのは類と道明寺<以外>の名前ばかり。
「やっぱ、連絡は来てない。道明寺からもないよ。
どういうこと?何があったの、二人でまた喧嘩したの?
ねえ、道明寺には類は会えたの?で、何か言ってた?」
「それが、もう日本にはいないらしくて、そこのところは俺らも聞けてない。
どういうわけか、司は拒否ってやがる。」
「牧野からの電話ならとるかもしれないぜ。かけてみろよ。」
「えっ?道明寺に?」
そろって頷く二人。
「ムリ!!」
今は、道明寺との関係どころのムードでもない。
でも、でも、ムリだ。
「薄情なやつだな、類の命がかかってんだぞ。」
「やだ、冗談でもそんな物騒なこと言わないで。」
「貸してみろ。代わりにかけてやる。」
携帯を奪われて、アドレス帳からどっかに電話をかけている。
長い呼び出し音がここまで聞こえるけれども、キャッチする音は聞こえない。
「ダメだ。」
「じゃ、次は、類!」
「おう。」
また電話をかけるけれども、応答なしみたい。
もう、どういうこと?
つづく
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