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HappyEverAfter

花沢類x牧野つくし

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Happy Ever After 28
happyeverafter28

28.

成田空港の入国ゲートには人だかりができていて、後ろの方で待っていると、ざわめきと一緒に黒い巻き毛とサングラスが視界に入った。

コツコツコツ・・・数人の取り巻きと共に歩く姿が映画のシーンみたいに絵になっていた。
スマートな長身に、モデルのように格好よくスーツを着こなす姿。
サングラスをかけていてもその鼻筋からわかる男らしく整った顔。
黙っていたらすごく紳士に見えるかも。
かなり周囲の視線をあびている。

「道明寺だ。」


そして、一際背の高いその男は、まっすぐにこちらに向かって歩いてくる。

「よお。」

ガバッ!

「うん、おかえり、道明寺ィ~、うわっ、ウングェ~エ~・・・。」

アメリカ式だか、大きく腕を広げで思い切り抱きしめられて、頬っぺたにキスされた。
ハグッてやつ、こんなに視線を集めた最中にどうよ。

「あたしは日本人だ~、放せ!」

「なんだよ、感動じゃねえのかよ。」

「いや、恥ずかしいって。」

「さ、行くぞ。」

当然のように肩に手を置かれ、ご一行に混じりハイヤーまで、ズッコケそうになりながらついて行く。



シートに座ってからも、道明寺はずっと私の右手を握ったまま離さず、窓の外と私の顔を交互に眺めては、テンション上がったまま、口がずっと開きっぱなし。
日本は変わったな。に始まり、日本人はやっぱ小せえ!とか、みんな髪が黒くて同じ顔して変じゃねえか?だとか、まあうるさい。
まるで孤島に幽閉されていて、帰還直後みたいにはしゃいでる。
久しぶりなのはわかるけども、日本人でしょうが!そう日本人の顔が変わるかぁ!?


「あんた、前からそんなおしゃべりだったっけ?」

「おおっ?わりぃ、わりぃ。
日本、何年ぶりだと思ってる?俺の母国だぜ、母国。」

「・・・っと、3年もたってない?」

「それにな、今回は少しゆっくり滞在できそうだしよ。
牧野ともこうしてられる、最高!」

大きな手でギュッと握られ、一瞬、高校時代もこうして握られたことがあったと思い出す。
道明寺の目はずっと笑っていて、子供のように嬉しそうで、思わずつられて微笑んだ。
そうやって喜ぶ分、日頃の激務が改めて浮かび上がる。

高校まで、不良息子だったヤツがね。
気楽な大学生活を捨て選んだのが、四六時中、仕事・仕事・仕事。
アホで単細胞じゃなけりゃ、とっくに鬱になって帰国してるね、あんなストレス満載の環境。
ここは安全、農耕民族の空気で平和、旧友もいて、米もおいしいよ、そりゃあ違う。
しみじみ感じ入るでしょうよ、行きっぱなしだったもん。
すっかり立派なニューヨーカーになって。

私はというと、こんな男と並んでると、なんだか背伸びしたような気になるし。
道明寺財閥直系のビジネス・オーラを発散されて、何から話そうか話題を探してるよ。


「俺、これから出社するけど、お前どうする?屋敷で待っとくか?」

「どうせ遅くなるんでしょ?明日は会えるし、今日は帰るよ。」

「おう。」

「皆、楽しみにしてるんだよ。
何をさし置いても、絶対、遅れないで来てよね。」

家の前に着くと、道明寺が顔を寄せてきた。
キ・ス・・・キスされる?
切れ長の強い眼差しに射られて、身体が固まって思わず目をつぶる。
気付くと、反射的に鼻先を少しだけ左に避けていた。
頬に一つキスを落としただけで、離れていく道明寺。


「・・・だよな、真昼間だ、これで我慢しとくか。」

「そ・そう・そう・・・よ///。」

身体が固まってた。


「じゃあな。」

「うん、じゃあ、バイバイ。」

道路に立ち、昼間の外気を浴びるやいなや、妙なザワツキが身体を駈けぬける。
あわてて振り返り、シートにもたれる道明寺の後頭部を目で追いかけた。
けれども、車はエンジン音も最小限で、見る間に小さくなっていく。
警鐘のように打つ鼓動が耳に響いている。
でも、大丈夫、落ち着かないのは久しぶりのせいだ、そう信じこんだ。

翌日の夜になる。
西門さんと美作さんと類、滋さんと桜子と優紀がそろって、再会の宴はにぎやかだった。
でも、誰がそんな大きな展開を迎えると想像できた?
当事者さえ、ただ黙ってやり過ごそうとしてただけ。
親友の久しぶりの帰国を温かく迎えて、日本の話を聞かせようと思っていたはず。

どのみち、そうなるとしても、どうしてその夜なのだろう。
もっと早くに、いや、もっと別の形で、お互いを傷つけず収まるように出来なかったのか。

楽しみにしていた再会。
私に会うため、一緒に過ごすため、ひたすら捻出した時間がもう最悪の無茶苦茶。
私だって、またあの頃みたいに過ごせると思ってた。
F4とT4で、めでたく浮かれた時間を。

そして、二人の距離が埋まり、希望が新たに膨らむ・・・そんな夜になるはずだったよね。

――― 悪いのは、全部、私。

ああ、どこからやり直したら誰も傷つけずに済んだ?
類の存在が、意識しない内にこんなに大きくなってるなんて、道明寺よりも・・・なぜ。


悶々と答えを求めても、ただ時間が無慈悲に過ぎた。

類と道明寺が決定的に割れた。
それも、私のせいで・・・。
どこから歯車が変わってしまってたのか。
何からどう手をつけて、私は一体どうすればいい?


つづく

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