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HappyEverAfter

花沢類x牧野つくし

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Happy Ever After 29
happyeverafter29

29.

道明寺の一時帰国とお披露目を祝う宴にて、私は初めてあんな真近で芸者さんを見た。
おしろいに真っ赤な口紅、着物や帯やカツラはいかにも動きにくそうで気の毒だと思った。
はずみで顔を拭ったりしないのかな~なんて余計な心配だろうけど。

「芸者さんって、どうしてあそこまで塗りたくるのかな。
桜子の口紅が薄く見えるわ。」

「誰と比べてんですか、先輩。
芸者さんの口紅が濃いのは女性のあそこを強調してるって説があるんですよ。
比べるなんてありえませんから。」

「は?」

「ほ~ら、よく見てください。唇、あれに似てません?」

「あんた、それは・・//。」

言いつつ、口元に目がいって、芸者さんに気付かれた。

「は~、スイマセン、気いつきませんで。
姉さんは飲みはらへんのですねェ。
ウーロン茶でよろしいですか?」

「あっ、はい!はい!」

かしこまってグラスを手に取り差し出してると、斜め向かいに座る類とバチッと目が合う。

あっ・・・微笑んでる、微笑んでるよ。
ホッーー。
いつもと同じ、よね?――― 良かった。
笑いがとれた、桜子えらい!
あんな別れ方して、どうやって顔合わせようかずっと気をもんでたから。
あの夜の出来事が、全て幻だったらどんなにいいかと。

東京湾の埠頭に立ったあの夜、涙を隠さない無防備な類を見た。
目に焼きついた。
心が震えた。
今日の類に違和感を覚えるくらい衝撃的で、海の匂いまで記憶にこびり付いてる。

すごくすごく悲しそうな瞳に、はじめは驚いて、見てたら、もらい泣きしていて。
やっぱり伝染する、無性にたまらなくせつなくなった。
母親を恨んで、我慢して、また傷つけられて。
つらかったね、偉かったねと頭をなぜてあげたかったし、褒めてあげたかったのに、でも、出来なかった。

類の言葉は更に続いて、それこそ、どうやって取り除けばいいかわからなくて。

マジ驚いた・・・。
『俺と一緒にこのまま居てよ。』って。
恋人達に人気だというスポットからして、類らしくない行動パターンだった、そういえば。

すぐに惚(とぼ)けてくるかと期待、いや、懇願したのに。
「冗談だよ、牧野。また引っかかったね。」ってさらりと。
けど、惚けてないのは聞くまでもなく、類の腕の力はかなり強く意思が感じられた。
頭を働かせると、しゃがみこんで一ミリも動けなくなりそうで、何も考えず呆然と突っ立ってた。
はっきりしていたのは、私を想ってくれる気持ちと同じくらい、私にも失いたくない気持ちがここにあるということ。

いつの間にか、混乱したまま突き飛ばして、無言で背を向ける。
あの夜から今日まで、ちゃんと話せていない。

そんな風に思い返していると、隣にドサッと座る音がして、あわてて顔を向ける。

「・・・ったく、あいつらガキみてえに。
携帯なんかで、写真をどう使うってんだ?」

道明寺が文句言いながら戻ってくるや、男らしい麝香の香りが辺りに漂う。

「なあ、牧野。」

懐かしい香りと優しい眼差しに、チクリと一針程度の痛みを覚える。

「あ~、あの二人は芸者さん呼ぶって、相当張り切ってたからさ。」

西門さんと美作さんが芸者さんにこだわる理由は多分おふざけしたいだけ。
けど、日本画ポーズを色々お願いして、それを受けてくれる芸者さんもさすがにエンターティナーで、ふざけた絵を作り、笑いを誘い盛り上がる。
そして、西門さんが並んで写メを撮りたいと言いだしてドタバタ。
道明寺はこの手の社交に慣れてるのか、はしゃぐ様子ではなかったけれど、滋さんに強引に引っ張られ、お祭り男達に交じり撮ってきたのだ。



「・・・ったく、めんどくせい。」

「写真嫌いは直ってないねぇ~。
でもまあ、言うこと聞いて良い子になった!司くん!」

とは、さらにショートヘアにした滋さんだ。
相変わらず、溌剌とした印象で、どこまで髪を短くするつもりだろう。

「そう人間、変わるわけねえって。」

「ううん、司はますます格好良くなったよ、ねっ、つくしもそう思ったでしょ?」

「ん?・・まあ、背が伸びたんじゃない?」

煮物をつつきながら、そう流してみた。

「おっ、わかったか!?お前!0.5センチ伸びてんだよ。」

「ウッソ!!」

「まだ大きくなってるの?司・・・。」

「おお、そうみたいだ。」

「じゃあ、類くんは?バスケしてると背が伸びるって言うじゃん?」

類は・・・・というと、聞いてるのか聞いてないのか・・・首を捻っただけ。

「類が伸びたのは中坊の時だよな。
筍みたいにスクスク伸びて、あっという間に俺は抜かされて、ヤバイと焦ったぜ。
さすがにもう止まってるだろ?」

美作さんが口をはさむと、今度は道明寺が。

「そうだ、類、サークルの奴と、お前、上手くコミュニケーションとれてんのかよ?」

「まあね、みんな大人だから。」

と類が返事。

「へエ~、人嫌いの類がな~。」

「言ったじゃん、大丈夫なんだって。
フォーメーションの確認とか、気持ちが繋がってないとプレーできないのよ。
意外に可愛がられてるって前に話したでしょ。
先輩からヘッドバンドもらってたし、ねっ。」

類に同意を求めて視線を配ると、私とは目を合わさないでビールを手にした。
わざとそうしてるのか、続いて、お箸をもってお膳のものに手をつけてこっちを見ない。
伏せ目がちの類、やっぱりこの場が気まずいんだ。

時間が流れ、二次会の場所へ移動することになった。
15分、徒歩での移動。
女子と男子になんとなく分かれ、私は桜子に引っ張られ並んで歩いた。

「先輩、今日の類さん、ちょっと暗いですよね。」

「・・っそ・そうかな・・・芸者組がはしゃぎ過ぎてるだけじゃないの。」

「お二人、何かあったんですか?」

「何を・・。」

さすがに鼻が利くというか、鋭い嗅覚を持つ桜子よ。

「別に良いんですけど、道明寺さんが気付かないかヒヤヒヤしてました。」

「・・・サークルのことかな・・・気をつけるよ、ありがと、桜子。」


つづく

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