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22.
パパとママと進と4人で年越しそばを食べ終え、満腹のお腹をさすっていると除夜の鐘が聞こえ始めた。
「鳴り出したね。」
「ママ、行くの?」
「もちろんよぉ~、行っとかなきゃ。
あんたも支度しなさい、進もよ!」
午後からF3たちと約束してるのに、家族全員で行くと張り切る両親に留守番を願い出るのは忍びなく、出かけることにした。
「つくしがお嫁にいったら、一緒に行けなくなるもんね。」
ママは目じりに皺を寄せ、笑ってるのに寂しそうな声でそう言う。
「つくし、来年もまだパパ達と一緒に行けるのかい?」
セールで買ったダウンジャケットと手編みの毛糸帽のパパが聞いてきた。
「当たり前じゃん、まだ英徳の学生だもん。
結婚はまだ先、まだまだよ。
それに、大財閥っていっても、王族じゃないんだから、帰ってこれるよ。」
「つくし~。
そうだよな、パパは待ってるぞ。」
夜道を4人で歩いていると、携帯が鳴った。
―道明寺。―
ピッ♪
「もしもし?」
「A Happy New Year」
「うん、明けましておめでと。」
「起きてたか?」
「今、道を歩いてる。
これから、家族とお参り。」
「お、そうか。」
「何やってたの?家?」
「アラームで起こされた。
ってか、去年はお前に先越されたから、今年はこっちがって思ってよ。」
「あ~、そうだったね。よく覚えてたじゃん。」
「スカイプつないで、早々にかけてきたもんな。」
「あんたが送ってきたからじゃない、誕生日祝いに。
手元にあれば、テレビ電話ってどんなか早く試したかったし。」
「おう。」
「そっちはまだ31日の昼間で、年越しムード無かったけど、ハハっ。」
「だな。」
「おめでとー!!って言ったのに返事がなくて、思い出すのにテンポずれてたし。」
「たっけえテンションで、お前の顔、画面からはみ出て誰かわからなかっただけだ。」
「ひど。」
「・・・クッソ、今だけ、14時間先ん所へ飛んで行きてえな。
会いてえ。」
「っ・・・//////っど・どうして急に言うかな~、こんな時。」
暗くてシンとした夜道、家族は聞き耳を立ててるはず。
「牧野、3月に会った時、誕生日プレゼント渡すから。」
「うん、うん、判ってるって。
もう別に、何ももらわなくても色々してもらってんだけど。」
「じゃあな。
お前、忘れんなよ、俺らのこともちゃんと願かけとけよ。」
「あっ・・・うん。」
プチ
「道明寺さんから?」
進がニヤッとしながら聞いてきた。
「まあそうだけど。」
少なくとも3人とも私の話はよ~く聞いてたわけね。
「あんたは幸せ者よ~、あんな立派な人に、そんだけ慕われて。
ママも娘に孝行してもらえたって思ってるのよ。」
「パパもだぞ。
パパより背が高いし、男前だろ。
収入だってある。
でも、完敗ではないんだよな。
つくしを大事にする気持ちはパパの方が勝ってる。」
「パパ~。」
パパの腕に自分の腕を絡ませ、この幸せがずっと続きますようにって願わずにいられなかった。
午後になり、桜子の家で着付けをしてもらい、二人で待ち合わせの交差点へ出向いた。
もう既に初詣客でわんさか。
真夜中、家族で歩いた道と違い、神社のずっと手前から出店が軒を連ね、人・人・人。
香ばしい焼きトウモロコシの香り、アニメキャラクターの仮面、赤いリンゴ飴がズラリと並ぶ。
「着物の人、案外、いますね。」
「桜子、ありがとう。
神様も一目置いてくれそうだよ、この着物、素敵だから。」
「先輩は着物似合いますよね、ストーンとした体型ってうらやましい。」
「うっ、褒められてんの? っハハハハ。」
「あぁっ、いたいた!」
「つくし~、ひさしぶり!!!似合う~着物。」
「滋さんも素敵ですよ。」
滋さんは現代調のモノクロ柄、桜子は桜の花がパラパラ描かれた可愛い柄、私のは少し大人びた白色の大菊が肩から斜めに入っているけれど、全体が薄黄色のパステル色なので若者向けだと思う。
立っているだけで華やかなグループなので、そこだけ空いたスペースができて目立ってた。
近寄りがたいというより、鑑賞するため、適度な距離をとって歩く人が多いのだろう。
「お待たせ~。」
「おっ、美女三人がそろったか、じゃ行くか。」
「まずは、お参りだな。」
色鮮やかな着物娘が三人並び、F3と一緒となると注目されっぱなしだけども、文字通り、みんな正月気分なんだし、晴れ着でのお正月だ、お陰でその状況も楽しめそう。
「牧野、似合ってるよ。」
「ありがと、あたしは寸胴だから着物が似合うらしいわ。」
「着こなせてるんだから、素直に喜んで。」
「ほんとにそう?」
頷いた類に続くように、キーキー、ツウィッ、ツウィッと鳥の高鳴きがした。
参道の左側には鬱蒼とした森があり、どこかで鳥が巣を作ってるのかも知れない。
「あっ、そうだ、司に送ってやろ。
牧野、こっち向いて。」
パシャ
振り返るやいなや、類に撮られた。
「わざわざ送んなくても・・・。」
早速その写真を送信し、満足そうに携帯をしまい、再度、視線を向けてくる。
「これは日本からのお年玉ってことで。」
「友達思いなのか、からかってんのかよくわかんない。」
「彼女の写真喜ばない彼氏いないでしょ。」
「まあそうなんだけど・・・類が送るとね。」
「クククッ、後がたいへん?」
「わかるでしょ。」
「今日のは絶対、司に見せとかなきゃ。」
「あっそ。」
それから、大きなお賽銭箱の前で鐘を鳴らし、今年一年の無事と幸せを祈願して、お守りを買った。
首に白いファーを巻いた女の子がリンゴ飴を手に持ちながら、迷子の係員に涙を拭いてもらっている。
石畳の簡素な参道に、一夜にして現れた色とりどりの出店。
まるで夢物語のように魅惑的な色合わせで、子供達はもちろん、かつて子供だった大人達も、瞳をキラキラさせられる数少ない余興の場だ。
子供の目線なら、それ以外目に入らないほど強烈に映るはず。
「どうした?」
「子供が迷子になってる。」
「ああ・・・もう大丈夫だよ。」
「泣いても、あのリンゴ飴は大事そうにして、クスッ。」
「牧野も食べる?」
それを聞いた滋さんが、すかさず食べると言い出して、もと来た道を引き返し買おうということになった。
「いいよ、俺一人で買ってくるから。」
着物を着て人ごみを歩くのは大変だからと、類が機転を利かせてくれる。
「おーい、お前ら、あっちに甘酒があるって。」
西門さんが言うには、本殿から離れた社殿の横で地元の人たちが無料で甘酒奉仕しているらしい。
「でも、類が。。。」
「一応、メールで送っとけば?」
そうすることにし、西門さんの後をついて行くと、人ごみの向こうにブースがあって、その中では大きなお鍋から温かそうな湯気がもうもうと立ち上っており、その手前で美作さんがハッピをきたオバサンに挟まれ、申し訳なさそうに甘酒をすすっていた。
白い紙コップに入った甘酒は久しぶりに胃に染みて、懐かしさを感じずにはいれない味だ。
フーフー言いながら、ようやく飲み終えても類は来なくて、もしかして、着信音に気付かなかったのかな?と思っていると、友里ちゃんが向こうからやってくるのが見えた。
お友達と歩いており、向こうも私に気付いた様子。
「友里ちゃん!!」
手を振った。
「つくしちゃん! 明けましておめでと、今年もヨロシク!」
「おめでとうございます。 こちらこそ、よろしくお願いしますね。お友達とお参り?」
「そうなの、凄い人ね。
つくしちゃん、今日は着物姿なのね、キレイ。
お友達と合わせて着物を着たの?皆さん、本当に素敵ね。」
友里ちゃんは横に並ぶ滋さんと桜子に挨拶した後、それぞれ帯の結び方まで絶賛してくれて、自分も着物を着つけてもらえば良かったと、笑って悔しがっていた。
そう言ってもらえると、三人とも悪い気はしない。
友里ちゃんは、西門さんと美作さんに気付いたようで、二人へ一礼すると、思い出したように「じゃあ、またね!」と言って、人ごみの中に消えてしまった。
つづく
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