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18.
バラのアーチには小粒のライトが星屑のように散りばめられ、ビッグ・サンタと7人の小びと達がド派手なネオンをまとって歓迎してくれていた。
期待通り!
ウキウキさせてくれる美作邸!!
「ウッス!」
部屋に入ると、西門さんがドアの側で、古めかしいLP盤を一枚手にして突っ立っていた。
「おうっ、来たな。」
左耳に並んだ黒いピアスとダイヤのピアスがダブルで目に付く。
上から3つボタンのあいた黒いサテンシャツ、あいかわらずホストみたいに妖しい魅力を放っていて、女を惑わす香りでも分泌しながら歩いてんじゃなかろうか、この男。
「西門さん、久しぶり!」
「おっ、勤労処女。
類、ちょうど良かったわ。
これ終わったら、後はお前が選んでいいぜ。
ホレ、あきらのお宝。」
西門さんは両手でジャケットのLP盤を持ち、長細い手足を優雅に動かしながら横切って行った。
ほどなくして、滋さん・桜子がやってきてパーティーが始まった。
滋さんは入ってくるなり、マシンガンのようにしゃべりまくり、桜子も破目をはずさんとばかりビールにワイン、何杯も飲んですっかりご機嫌さんになっている。
「つくし~、もうじき誕生日だよね~。
司、帰ってこないのかな~?
突然帰ってきて、つくしをビックリさせるの。」
「あいつ?
忙しそうだよ、当分無理そう。」
最近の会話を思い出し、そう返事した。
「え~~っ!?ハタチだよ、ハタチになる誕生日なのに?」
「先輩、まるで倦怠期の夫婦じゃないですか。
クリスマスくらいは、どうせ向こうも長い休みなんだから。」
「そうでもないみたい。
クリスマス・ホリデーは残務処理って。」
「司、鬼のように詰め込んでるな。」
そう言ったのは薄い萌黄色のシャツを着た美作さん。
肩まで伸ばしたウェーブヘアをゴムで1つにくくり、ワインを手にする度に手首のロレックスがキラリと光ってまぶしい。
桜子がグラスを空にし、美作さんの前に突き出しながら、「同じの頂戴!」とすごみをきかせた。
相当飲んで、すでに目が座ってる。
美作さんは大きなイタリアン・ソファーからのっそり立ち上がりながら、「飲みすぎじゃないか?」とぼやくけれども、新しいグラスを用意したり、ジューシーな果物をお皿に取る仕草はあいかわらず紳士的にスマートで、飲みのスイッチが入った酒豪桜子の横でも決して嫌な顔を見せないのはすごい。
ふと、滋さんがジーッとこっちを見ているのに気付くやいなや、変なことを言い出した。
「なんだか、類くんとつくしが付き合ってるみたいだよね。
だって、類君、つくしばっか見てるし、つくしも類くんにべったり。」
「へえ?」
思ってもいなかったことを突然いわれて、最初はキョトンとした。
「司、知らないんでしょ?こんな風になってるの。」
「へ?・・こんな風って、どんな風よ、前から変わらないわよ。
ただ、ホラ、LP盤って珍しいし・・・類は詳しそうだから。
普通だよ、別に。
ねえ?」
コクリ。
類に賛同を求めると、サラリと流し頷くだけだ。
「週末もでしょ?バスケで。
二人だけで、ズルイ。
滋ちゃんもバスケ出来るし、上手いのに。」
「いやいや、滋さん、男子のチームだって。」
「大河原、類はともかく、牧野はすっかりバスケにはまってるぜ。
そっとしとけ。」
西門さんが口をはさんだ。
「ねえ、類くんは?
類くんはつくしと一緒にいて平気?」
「・・・?・・」
類はゆっくり瞬きをしながら滋さんの方に目を向けた。
「俺は牧野が大切だと思ってるし、ずっと変わらないよ。」
っぷ、改めて言う?
「それに、バスケも面白くなってきた、いい運動だし。」
そういって両手を真上に上げ、大きく伸びをする。
「へー、類、そういう風に思っててくれたんだ。
誘ってよかった。
学校で真剣にやってたら、もっと上手くなってて、どっかのプロから勧誘があったかもね。
ホント、上手いもん。」
「まっさかっ。」
フっと笑いながら、自分の指を曲げたり伸ばしたり。
太腿に片手を置くと、続けて関東リーグ試合結果と自分のポジションについて話し出した。
キャプテンや門脇さんのことにも触れ、spanky’sメンバーの話をするのには驚いた。
「おい、あきら、類は前からスポーツ青年だったか?
バスケって、まだ団体競技のままだよな?」
「あ~、俺も驚いた。俺ら以外の奴と・・・。」
それを聞いて、少し拗ねた様子の類。
唇をとがらせ、ジロリと二人をにらむ。
そして、首をギコッギコッと音たて曲げながら、何気に二人を見て言った。
「たまには運動すれば?」
西門さんと美作さんは二人顔を見合わせポカーンとしている。
「「なんだ?」」
「あんた達もあたしの作った体力作りプログラムする?
容赦しないよぅ。」
「「い・いえ・いえ、遠慮しときます。」」
「ホラ、チケット!」
クリスマスプレゼント交換会では、縁あってチケットを手に入れた。
にんまりと笑顔を向けると、類も返してくれる。
酔い覚ましにベランダの窓を開け、設えられたベンチに二人で腰掛けた。
「ねえ、類、今日はやけにご機嫌だった?
バスケの話を話して聞かせるなんて。」
「そ?少し自慢してやった。」
「ははっ。
実はちょっとさ、最近の類、元気ないから心配してたんだ。」
「・・・。」
「ね?」
「ああ・・・、サンキュ。」
「うん。」
「頑張って持ち上げてみた。
自分で自分を盛り上げなくっちゃ!だろ?
牧野の言葉、実践してみただけ。」
「はぁ。」
「団体競技が面倒じゃないっていうのはホントだし。
牧野にも感謝してる。」
「どうしたの?改まって変だし。」
「俺のこと、いくつだと思ってる?
少なくても牧野より1つ年上だし。
ちゃんと大人になってんの・・・まだまだ成長中。」
類はベンチに座りながら、伸ばした両足をそろえ両肘を後ろの窓の桟におき、胸から足まで一直線の格好で天井を見上げた。
そうやってみると、確かに長くて立派な体躯。
そして、サラサラの茶髪が後ろに流れ、骨ばった顔のラインが際立つ。
喉仏がボコッと突き出て、すごく男性っぽく見えた。
「ごめん、バカにしてるわけじゃないけど。
類がいつもと違うような感じがして気持ち悪い。」
ジロッとこっちを見る。
また拗ねるのかと思ったら、天井に視線を戻し小さなため息をついた。
「牧野が心配してくれなくても、自分の事は自分で始末出来る年齢ってこと。
だから、もう心配とかいいから。」
「・・・うん。」
心配されたくないのか。
弟みたいにぞんざいに相手したり、手のかかる少年みたいに過保護に扱ったりしてきたけど、それは類が不出来だからというわけではないんだよ。
私が勝手に好きでやってただけ。
すごい事して感心させられるたび、それは全部、“F4の類だから“で納得してたけど、花沢類はそこで止まってなくてもっと先へ行くつもり?
まだまだ進化してるんだね。
少し複雑な気分だよ。
つづく
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