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14.
スポッ
門脇さんのレイアップ・シュートがはいった!追い越した。
「ナイッシュ~ゥ。
GO!GO!Spanky’s ! GO! GO! 優紀、やったね。 」
「うん!」
どっと歓声が沸く中、門脇さんが優紀に向かってサム・アップ、明らかにビューンとハートを飛ばしてきた。
さすがに、チームを奮わせるのも忘れず、バンバン声出しやってたけど。
対して優紀もうっとり熱いまなざしで、胸の前で指を組み、しかと受け止めたよう。
そりゃ、チームの得点頭の彼氏、それにさっきのシュートは格好よかった。
わかるよ、わかるけど、公然とこのアツアツぶりは私達にこれまで無くて!?他人事だったはず。
昔、ようやるね~みたいに遠く二人して眺めてたじゃない。
恋は盲目ってよく言ったもんだ・・・乙女な優紀、そんな風になるなんてね。
試合は続行、速攻に持ち込んだ上沼さんが走り出し、それを追いかけ走りこむ類、二人を囲むように相手チームが迫ってくる。
上沼さんが類にバック・パスして自分はイン。
バウンド・パスを受けワンハンド・ジャンプ・シュート!!流れるようなコンビプレイ。
軽々飛び上がり、頭1つ分飛び出た上沼さんのシュートは華麗に見えた。
入った!!
上沼さん、格好いい~!類のアシストもいい!!
応援席からの黄色い声援に負けず声を張り上げる。
「二人ともナイ~ス!」
いける。
『今日は優勝いただきかも・・・』 嬉しい期待がふくらんだ。
けれど、これは準決勝戦、相手もなかなか強くて、続けて得点を奪われる。
頼む!誰かここでもう一本、頼む、お願い~何でもいいから得点を。
願いが届いたのか、ピボットで相手を抜き、シュートにつながるナイス・アシストを見せてくれたのが助っ人の類。
得点盤の数字が変わる。
「る~い~!さすがぁ~。」
移動中の類がチラリとこちらに視線を向けた気がした。
私は手をグーにして振り回し、大声を張り上げる。
「もう一本~!!もう一本~!!」
奮闘の結果、決勝戦進出。
勝った、やった、準優勝確定だ。
岩波さん、上っちさん、門脇さん、上沼さん・・・次々と笑顔で勝利のハイタッチ。
それから、類にも。
「類、ナイス・アシストだった!」
そう言いながら、互いの右手を空でハイタッチ、パチンと鳴った。
「最近、腕あげた?上手くなってるよ、確実に。
練習の成果でてる、すごいじゃん。」
「サンキュ。
牧野に走らされてるお陰。」
「されてる・・・って人聞き悪い。
普段はテレビっ子なんだもん、仕方ないでしょう。
でも、ほ~んと不思議、類はここって時に出てくるんだから。」
類と肩を並べながらベンチから離れようとすると、優紀に呼び止められた。
「ちょっと、写真撮ろ。
並んで、みんな、並んで~。」
ご機嫌な上っちさんはじめ、ふざけた4~5人がわざとギュッと寄ってきて、一気に男臭い匂いに包まれた。
誰かのタオルが腕に触れてるし、体育館と汗の臭いが混ざり合い、これぞバスケ臭って感じかな。
さらに人が増え横からも後ろからも押され、倒れそうになった時、シャッターの音が聞こえた。
パシリッ
エエエッ---ッ??
「次、私が撮ります!」
友里ちゃんが機転を利かせ優紀からカメラを受け取った。
嬉しそうに門脇さんの横に並び、肩を抱かれる優紀。
幸せそうな二人と勝利を喜ぶみんなの素敵な記念写真になりそうだ。
今度はちゃんと撮ってもらお。
その時ふいに肩に感じた重みは隣に立つ男の腕の重みで、それは類の腕。
さりげなく、自然に・・・男同士ならよく見かけるけれど、チームメイトとしてだよね。
ユニフォームから出た素腕が私の首の後ろに乗っかって、少しだけ熱くて重い。
太くて固い締まった筋肉がやっぱり男だった~って改めて思う。
柑橘系のコロンと汗の匂いは馴染んだ懐かしい香りのような・・・。
横を向くと、まだ汗が乾いてない類の上腕筋に頬があたり、湿り気が頬にペタっとくっついた。
類と目が合う。
「ゴメン、汗、いや?」
「べ・べつに~。
っす・進で慣れてるし、こんなの。」
「だよな?」
「・・///。」
だよな・・・と言われたものの、慣れてないし。
間近でニコリと微笑み、白い歯をのぞかせたまま肩に乗せた方の手で、なぜかポンポン頭を小突かれた。
体育館の白い照明が乱反射して、そのサラ髪も薄茶の瞳も、その肌理(キメ)こまかい皮膚も全部が明るいトーンになって目に飛び込んでくる。
呆けた顔で見上げてたのかな・・・。
「牧野さん、スミマセン、こっち向いてくださーい。」
「えっ・・///、ごめん。」
類が愉快そうにニヤっと笑った。
こいつ、確信犯だ!・・・もう。
無常にもそのタイミングで、パシリッ
「あぁ~、変な顔で撮られた、類のせい!」
仕返しに・・・類の首にかかっていたタオルをクロスさせ、首を絞める振りをしてみる。
「朝からあたしで遊んでんでしょ??ええっー?」
力を抜きながら、後ろへ逃れようとする類を追いかけ、なんとか反省の弁を。
「止め・・・牧野、妄想じゃないの~?」
ふざけた口調だし。
「妄想なんかじゃ、ちょっとぉ。」
「ックク・・・想像通りのリアクション。」
「やっぱ!」
類にタオルを握られ効果は無くても、ギャフンと言わせたくて猫のようにひつこく飛びかかった。
「ホラホラ、そこのガキども、お前ら恥じい・・・もう出るぞ。」
キャプテンの岩波さんからお咎め、だから、中断。
もとは今朝の私が変だったせいで、類は元気づけるつもりだったんだろうな。
類には世話になってるわ、まだまだね。
その時、冷たく見つめる視線に気が付いた。
こっちをみる瞳が・・・その時ようやく初めて。
友里ちゃん?
一瞬のこと、すぐに優紀に話しかけ笑顔にもどっていた。
ホントに一瞬の間だったけど・・・あの目つきは、気のせい?
そのまま次の試合までの休憩に入った。
まだ試合の余韻が残るコートをモップを持ったお兄ちゃんが小走りで横切って行った。
勝った時は綺麗に見えるのに、負けた時は汚れて見えるのが不思議なバスケ・コート。
今は重たい空気が残っていて、メンバーの足取りも重い。
決勝戦、Spanky’sは2点差の僅差で・・・負けた。
競り合いの試合展開ですごく盛り上がった。
早く取り戻せ~との応援むなしく、終了ホイッスルが鳴り響くやいなや、ベンチで肩をガックリ落とした。
いつも軽口たたく上っちさんが物静かになるし、コーチの激励も空振り。
「次につながるプレイがいくつか」・・・そう言ってくれたのに聞こえてないみたい。
「キャプテン、お疲れ様。」
私はスコアノートを片手に岩波さんに近づいた。
「おう・・・終わったな。」
「はい、惜しかったですね。」
精一杯笑顔で答えた。
すると、岩波さんも少し笑顔を作って返してくれる。
後ろから上沼さんがやって来て、3人並んで出口に向かう形になった。
「岩波さんがくれたパス、あのサイド・インでキャッチしたでしょ、あれ、俺がミスらなければ勝てた試合だったっすよね。」
「そんなもん。
言い出したら切りない。」
「いやぁ~あぁ、はぁ~。」
上沼さんがガックリとため息。
「でも、準優勝って立派な成績ですよ。
み~んな頑張りました!」
「つくしちゃんの笑顔はいいね。
和むなあ~、ヒマワリみたいで明るくなるしね。
うちの秘密兵器かもな。」
「ありがとうございます、キャプテン。
笑顔を褒められるのだけは素直に受けることにしてるんです。」
「ホントに・・・明るくなりますよね。」
上沼さんからも優しく褒められた。
「これ、タダなんでいくらでも・・・ははっ。」
「じゃあ、6時にお店集合で。
類くんと来るでしょ?」
「はい、もちろん!」
そう言って、二人はロッカールームに消えていき、私は残りの後片付けを忙しく始める。
背後で神崎友里ちゃんが物言いたげにしていることに、ちっとも気付かないまま・・・。
つづく
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