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HappyEverAfter

花沢類x牧野つくし

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Happy Ever After 13
happyeverafter13

13.

新しいパソコンのセットアップが終わり、道明寺へ長いメールを送った。

チームの雰囲気が伝わるように内輪の話を。
キャプテンは仕事帰りに皇居をランニングしてるとか、金物屋のメンバーから棚卸しの処分品をもらったとか。
そして、あの類が上から可愛がられ信頼されてるということも。

色んな業種、年齢もバラバラ、寄り集まりの仲間が試合に向かって一団となる感じ、団体競技のそれっていいいもんだよって。
道明寺へあて、太平洋を隔て共有出来るITの恩恵を借りてみる。

そもそも、私がクラブなんて晴天の霹靂なんだから。
英徳のクラブ活動は贅沢すぎて、グランドを走る集団は記憶の片隅、同情でもないだろうけど、わかってくれるはず。

スッキリした気分で送信ボタンをポンっと押した。
それが、昨夜のことで、そして今朝。
朝からうるさい携帯で目が覚めた、発信元はもちろん道明寺だ。

「悪い、寝てたか?」

「道明寺?えっ、いったい・・何時・・?なんなの・・?」

「メール読んだ。」

「ああ・・・っそう。
あれは、そういうことなんっ 」

道明寺の不機嫌な声に割り込まれ、あの左眉がギイギイィ~っと人形みたいに動くのが見えるようだ。

「フフン・・・みんなでお楽しーいクラブってことだな?」


ほれ、来た。
重いため息が地面に向かい落ちていく。
そりゃ、包みこんでくれるタイプじゃなし、この手の話はまず吠えとくのが十八番のタイプ。
でもさあ・・・。

「で、悪い?あたしが楽しんでたら悪い?
彼女が幸せだったら、普通、彼氏は喜ぶもんじゃないの?
バスケのマネージャー始めたことは、話したじゃん。
そしたら、納得してくれたじゃない、忘れたわけ?」

苦々しい気分のところ、堅物男がもう一振り落としやがる。

「そんな青くせえもん、知るか。
チャラチャラくっついてやるもんだと思わねえだろ。」

「どこが~、あんたが世間知らずなのが悪いんじゃん。
コミュニケーションは大切、団体競技だよ、仲良くは大事なの!」

「仲良く?面白くねえ。」

「説明は無理・・・ほんと、堅物、信じられない。」

これみよがしに思い切りため息をついてやる。

「はぁ~~。」



「で、お前、なんで黙ってた?なんで類がいるんだよ、聞いてなかったぜ。」

「それは・・・説明する時間がなかったから。」

「いいや、わざと隠してたな。」

「そういうわけじゃなくて・・・言う必要ないと思ったから。
だって、類のことになると言いがかりつけてきそうだし。」

「当然。
類とお前には前科がある。」

「アホくさ。」

「なあ、必要かそうでないかは俺が決めるから、こんくらい長いメール毎日よこせ。
類には釘差しておく、なっ?」

「っど・ど・どう、何を類にどう言うつもり?
まさか、すぐ辞めろとか言うつもり?
そんなことしたら、ただじゃおかないよ。」

「ムキになって、やっぱりお前ら。」

「ったく、もうメールなんかするんじゃなかった。
あんた、類のこととなると頭おかしくなるんだから。
それから、毎日メールなんか無理だかんね!」

「はあ?」

「時間かかるし・・・あんたにはわからないだろうけどぉ。」

「こっちも返してたじゃねえか、この指で打ってやったぞ。」

「だよね、あの短文は。
元気だとか、OKとか・・・短かすぎて笑える。
あたしだってひまじゃないんだよ。」

「だったら、バスケ辞めろよ。」

「説明したばっかでしょ!もう!」

「バスケもバイトも、俺には大して変わんねえ。
俺様に使う時間かそれ以外の時間か、そうだろ?見張ってるわけでもねえし。」

「自己中!成長したと思ったのに勘違いだったわ。」

そんなこんなの応酬の末、収まり無いままリミットが来る。

「とにかく、メールを毎日よこせ、わかったか??」

「まず、その俺様な言い方直しなさい。」

「うるせ~、つべこべ言わずそうしろ!じゃあな!」

プツ・・・・・・プープープープー
言うだけ言ってきれた。
どうして言い合いで終わっちゃうんだろ、素直に話しただけなのに・・・。

今朝の会話の余韻で足取り重く、白いポルシェまでずっと考え込みながら歩いた。
乗り込むやいなや、類への挨拶もそこそこ、大きなため息をついてしまう。

「牧野、朝からお疲れ?なんか機嫌悪い。」

「あぁ~ごめん、類。」

「原因は司?」

「・・・・・・もう、話になんない。」

「けんか?」

「あっ、そうそう、あのバカから連絡あっても聞き流していいからね。」

シートに深く沈み、フロントをまっすぐ見つめたまま話した。
あまり詳しく話したくない。
すると、視界の中で動くものが・・・。

「ま~きの、・・・・・おはよ。」


ギョッ。

紅茶色の瞳が二つ、視界をさえぎり覗き込んでる。
至近距離で綺麗な男に見つめられるのは、いまだ免疫つかなくて焦るけど、類の行動パターンには慣れてきた、体勢を立て直すのも早い。
けど、そんな無邪気な顔で気持ちよさそうな白いカシミアまでズルイ。

そしてお決まり、類がニコリと微笑むと、とたんに紐解かれたように全てが動き出す。

「お・おはよ・・う・・・、挨拶なしで失礼しましたぁ。」

「うん。」

「お迎えありがとうね。」

「牧野のお迎えだし喜んで。」

「・・物好き。」

「まきの、ようやくこっち見てくれた。」

嬉しそうにニコリと微笑む類。

「あっ!」


一瞬のこと、気が抜けてたのか、柑橘系コロンが急に濃くなったと思ったら、類の髪と柔らかな耳タブ?が唇に当たった・・・キス・・・じゃないよね?
回避できないまま、ピキンと固まって・・・何が起こったのか、目がキョロキョロ泳いでしまう。
鼻の奥に類の香りをいっぱいため込んだまま、朝っぱらから激しくドキドキ鳴る鼓動。
からかう様に口角を持ち上げた類が我が物を得たりという表情して。


「あのさ、ベ・ル・ト。
牧野、キスされたと思ってる?クスッ。」

「あああぁぁぁぁーーー、シートベルトね、シートベ・ル・ト。
ビックリした。」

そっと唇に指で触れてみる。
キスじゃなかったと安心するやら、耳たぶの感触がこそばくて指が離せなかった。
なのに、愉快そうに微笑む顔に悪気なくて、怒るのも忘れてる。

「だって、また牧野に怒られたくないし。」

「あったりまえ。」

類はハイハイって小声で言うとドライブにシフトチェンジし発進させて、試合会場までずっと機嫌よかった。

皮とコロンが混じった車内の香り、微かなハミング、そして少年のような横顔。
見慣れた風景を目で追いながら、だんだん気持ちが和らいでいく、魔法みたいに。
ただ一緒にいると気分がほぐれて、苛立ちが薄まっていく。
大切で貴重な友達だから、F4との絆が壊れないよう一番願ってるのは私だよね。
ずっとこの関係が続きますようにって。

窓の外を見上げると、思いがけずの快晴だった。

「今日でラスト、関東リーグ大会。
勝とうね、類。」

チラリと感じる視線。
なんだか笑ってる?
私は青い空を見上げたまま小さなガッツポーズをして、気合をいれた。

つづく

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