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HappyEverAfter

花沢類x牧野つくし

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Happy Ever After 12
happyeverafter12

12.

「優紀、あたしも同じものお代わり~、グレープフルーツ大目で♪」

「了解!
で、上沼さんはまたビール?門脇さんは、っと。」

テーブルの麦焼酎にすっと手を伸ばし、慣れた手つきでボトルのふたを回す優紀が、いつもと違って見えるから、実は密かに観察中。
キューブ・アイスをカランっと鳴らし、「ハイっ、お代わり♪」って蜜のように甘い声で差し出す、いや、声はいつもと同じなんだけど、違うのは腕の角度?それとも相手を見つめる眼差し?
すると、相方が「サンキュ♪」と大満足そ~うに受け取って、まるで新婚のようで。
今宵は門脇さんのアパートで飲み会となり、優紀はミニキッチンでつまみを作ってくれて、新妻の色気なるものを発散させてる状況。
別にどってことないジーンズ生地のカジュアルなエプロン姿。
なのに、ピンク系姉ちゃんに負けないくらい色っぽくて、親友の私でさえなんやら衝動が、ヤバイよ。
ここ、二人の愛の巣(?)って感じじゃん。



「俺もぉ、それくださ~い。
優紀ちゃんって可愛いし、いい奥さんになりそ。
俺はなぁ、門脇、初めてお前が羨ましいと思ったわ。」

「だろ?俺、優紀ちゃんにぞっこんなの。
お前も過去に縛られず、本腰で婚活する気になっただろ?俺に続け続け。」

「プッ!門脇さん、結婚なんて話、どこにもないじゃないですか!?」

そんな優紀の台詞も可愛くて仕方ない様子の門脇さんは、自宅だからか、リラックスしてもうメロメロのフニャフニャって感じ。
コートで見せる得点王の姿も形無し。
照れ笑いで微笑み返す優紀は・・・うん、色っぽい光線が!?なんだか眩しすぎる。
恋を知ればなんとやら~それに引きかえ、私と道明寺との恋愛温度は・・・生身に乏しすぎて!まっ、仕方ないけど。


「上沼さんならわざわざそんな事しなくても、向こうから寄ってくるんじゃないですか?」

「まさかまさか、休日はバスケだしなぁ。」

「ファンの女の子から告白とかされてません?」

「怖え~、遠慮しとく。」

「こいつ、元カノとのトラウマ、引きづってんだよ。
あれは、しゃーないと思うぜ、お前は約束守ったし精一杯やった、何も悪くねえって。
運が悪かったって。
卒業のタイミングで、向こうが福岡勤務辞令ってそりゃないよな。
仕事はともかく、家にこもってばかりじゃ生活は出来んだろし、相手にも色んな出会いがあって当然で。
だいたい、美人の新卒女子を周りが放っておくか?
郷に入れば郷に従へ、変わるなって言う方が土台無理なんだってば。」

ゲッ・・・上沼さんの遠恋話だ。
上っちさんから聞いたことある、上沼さんは遠恋で潰れたことあるから遠恋反対派だって。
美人、新卒、浮気された?
はあ、そういうことですか。

「俺、穴埋めは完璧だったんだけどな。」

上沼さんは納得いかない様子で、首を横に振りながらグラスに手を伸ばした。

「お前ほどイベント毎に会いに行ってた奴も少ないと思うぜ。
新卒同士で金も無い中、その誠意は通じてたって。」

「そうだよなぁ?・・・。」

「ところで、つくしちゃん?彼氏と上手くいってるの?」

突然、門脇さんから話を振られてビックリした。

「はいっ!!??あたしですか?」

「つくしなら、NYへ会いに行って、帰ってきたばっかりだよね?」

「うん。」

「ふ~ん。」

「何か変?・・・・上沼さん、その目は何なんですか~?」

「いや、つくしちゃん・・・あん時、泣きそうだっただろ。」

「っ?べっつに。」

「知らねえぞ~いつの間にかジ・エンドだぞ。」

「再会直後って言ってんだから、絡むなって。
遠恋生活5・6年、しっかり愛を育んでゴールインって話も聞くし、頑張り様で。」

「悪かったな、俺らは駄目で。」

「お前らがどうのこうの、別!」

ギロリと門脇さんをにらむ上沼さん。
二人を見てると、胸ん中がギュッと詰まってくる。

「あたしたちは・・・あたしは残って頑張ることに決めてるから。」

「いいねー意気込みっていうかそれ。
色んな不安とかは払拭できるわけ?」

「不安なんか。」 

「俺の取り越し苦労?愚痴袋になってやんのに。」

「えっ?」

愚痴・・・かぁ。
ホントは上沼さんに話してみたいことがあるのに、やせ我慢。
今度ばかりは困った、どうやってこの気持ちにケリつけよう?
トーマスとローズ、あからさまなブーイングの観客、摩天楼に映える道明寺の背広姿・・・彼らが順番に出てきて、せっかく道明寺に会えたのになんだか心が重い。

『恋人と離れちゃいけないんだよ!一緒に居るから頑張れる。』とトーマスの声。
そして、女狐達の暴言だってそう、『今さらクラブですって?』
正論、そうだよね・・・。
実際、道明寺ばっか苦労させ、私はノホホンと青春して、バスケは辞めたくないし。
心に引っかかった声が、ボディー・ブローのようにだんだん効いてきて、気になって仕方なかった。

今頃、こっち残って勝手すぎ?って考えたり、やっぱ良かったって考えたり・・・堂々巡りでため息つく。
ああー頭が混乱する・・・どうしちゃったんだろ。
そもそも、トーマスがわかったようにエラソーな事言うのが悪い。

門脇さんのアパートを出て、上沼さんが家まで送ってくれた。
夜道は枯葉がコンクリを覆っていて、哀れに干からびた葉っぱを踏みつけるとクシャリと乾いた音をたてた。
スプリングコートの襟元を立て行き過ぎる男性や暖色のチークが際立つ色白OLが目を引く秋の夜。
そんな夜には、やっぱり恋話(コイバナ)なんだ。

コツコツ・・コツコツ・・・二人の足音はメトロノームのように響いて、上沼さんの女性不信(?)の話から知らず知らずに道明寺の話になっていった。
そして、私は胸の内をポツリポツリと話し出した。
漠然とした話なのに、上沼さんは全てを理解しているように優しい相槌をうってくれる。
それが呼び水のように、私の声はハリが出て、全部吐き出したいような気になった。


「それはカレシに対しての罪悪感じゃないの?
自分一人、日本でやりたいことやって楽しんでるから。」

「そっかなあ。」

「どっかで相手に悪いって思ってるんだよ。
そんなの感じる必要もないのに、真面目なつくしちゃんは。」

「確かに、バスケ・マネージャーがこんな楽しいと思わなかった。
うちのパパ、リストラとかあって大変だったし、バイトできるようになってからはクラブする余裕がなくて。
だから、嬉しくて夢中になってたかも。」

「本当に大切な人の幸せを願わない奴は居ないし、夢中になってる事があれば、胸張って話してあげればいいんじゃないの?」

「ぜんっぜん、想像できない~。
そういうの、喜んでくれるタイプじゃなさそうな・・・とにかく嫉妬深いし、単純バカだし。」

「・・・でも、好き同士でしょ? つくしちゃんも彼も。」

私を抱きしめた道明寺の腕の温もりを思い出し、コクリと頷いた。
かわらず私のことを想ってくれていた道明寺。

「そうだね。
気が楽になった、上沼さんありがとう。」

「そのままNYに居付く日が来るって。」

「今回、全く兆候なしでも?」

「ハハッ・・・まず、卒業でしょ。
焦ることない、そのままで。」

声に出して話してみると、聞いてもらうだけでも楽になるし、心ん中が整理された気がする。

「上沼さんって聞き上手でアドバイスも上手。」

「そっ?俺は、いつでも相談のるよ。」

「はいっ、またお願いします!」

つづく

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