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11.
応援席にはSpanky’sのチームカラー緑x黄が目立ち、上沼さんや岩波さん、中でも花沢類目当ての女の子達が急増していて、嫌な予感。
英徳では慣れっこの光景だ。
F4の花沢類とバレた以上、びっくりしないよ。
だとしても、類がボールを持つだけで、黄色い声援が一段と大きく上がるのはどうにかならないものか、他のメンバーの気をそがれるじゃないのよ。
キャー♪花沢さーん ♪キャーッー♪
花沢さーん♪ ゴーゴー♪キャー♪
コートではちょうど類がボールを持ち、熱いゲームが展開されていた。
泉さんがスティールで相手からボールを奪うと、類はパスを受け取り、その長い手足で風を切るようなボール運びを見せる。
サラサラ茶色い髪が風になびき、汗で頬にくっついた髪から汗が滴り落ちる。
黄色い声援が一際増す。
そして、自身の背でスクリーン、絶妙にゾーン内へ飛び込む上沼さんにホイっとパスを通し、シュートが放たれる!が失敗。
すかさず、リバウンドを橋口さんが高い位置でキャッチし、バウンドパスで外に出す。
ああぁ~、ターンオーバーされた。
場内からドーッとため息が聞こえた。
あぁ~~取られた~。
いや、そそそう・・・偉い、類!!相手のパスをインターセプト、類!!ヤッタ。
そのまま中へ切り込みシュートだ!行け~!!
そう、GOGO!
ん?だめ~、けど、落ちたリバウンドを泉さんのミラクル・ダンク・シュート
ナイッ~~シュ~!!!!!はいった!きまった!
速いゲーム展開、チームワーク、だからバスケは面白い。
DFに回りながら上沼さんが類の肩をポンとたたき労うと、類は軽く頷きながらもう次の動きに入っていった。
いい調子だ。
インターバルになり、タオルとドリンクを配り終え、コーチの話に耳を傾けるメンバーを見守る。
「牧野、悪いけど俺のカバンからヘッドバンド持ってきて。」
「うん。」
類のカバン・・・カバン・・・。
すぐに見つかった黄色いヘッドバンド。
「ハイ、これでいい?」
「サンキュ」
「そんなの持ってた?」
「さっき、岩波さんからもらった。」
「へえ~。」
サイドから飛び出た髪をバンドの中へ入れてあげるつもりが、片手だったしサラサラだから、かえってグチャッとなってしまう。
わっ、ごめん。
「なに?」
「ちょ、ちょっとぉ、じっとして、座って!」
類が逃げるように動くから、追いかけて、ヘアバンドを最初からやり直し、素直にじっとする類の頭にセットしてあげる。
ホント髪の毛サッラサラで茶色の髪に黄色が映えてきれい。
頭の形もいいし、こんなヘアバンドが似合うなんて男にするのはつくづくもったいないと思いながら、ヘアメイクさんみたいにしばらく指先で直しながら触ってた。
「牧野、こそばいって、もういい?」
類は眉間にしわを寄せながら、後ろへ身を引いて、どうも我慢の限界だった様子、たまらず耳の後ろを犬みたいにゴシゴシゴシゴシ掻いている。
「ああぁ//、ごめん。」
だって、じっとしてたんだもん・・・遊んでしまった、悪かった、類。
笛が鳴り、ベンチへ退散しながら振り返ると、類の髪は結局、激しくピョンと飛び出たままだった。
今日の流れは調子良かった。
試合は勝利に終わり、メンバーの反省会へと引き揚げる準備中、倉庫室へつながる廊下で見覚えある女グループと鉢合わせてしまう。
浅井・鮎原・山野の三人組が場違いなヒールを履いて、香水をばら撒きながら仁王立ちしていた。
「どーも。」
こっちから挨拶したら、あいかわらず失礼な奴達だった。
「花沢さんの応援に来てみたら、ゲームも結構面白かったわ。」
「それなら、良かった。お蔭様で良い試合で。」
「牧野さん、あなたとは古いお付き合いだからご忠告よ・・・公然とあんな風にいちゃつかれると、変な噂が飛び交っても知らないわよ。
一人寂しくて、花沢さんに乗り換えたって。」
「なっ何っ?何を言ってるんですか?
誰がそんなこと。」
思いもかけない言葉に怒りを覚えた。
「あら、勘違いなさらないで。
私は牧野さんと道明寺さんの仲の良さを疑ってるわけじゃないわ。
身分だとか、容姿だとか、F4にとってつまらない事だって嫌というほどわかってるし、あれだけの事件を乗り越えた奇跡のカップルですもの。
それに、道明寺さんのことは良い社会勉強だと思ってるし、これでも貴方達の幸せを祈って差し上げてるのよ。」
「そういうのをね、親切の押し売り、余計なお世話って言うんですよ。
もういい加減にしてください。」
「あら、火の無いところに煙はたたないですわ。
あなたのこと、もう少し利口な人だと思ってたけど、買いかぶりすぎたようね。
今になって、ボロが出たのかしら?さっさと玉の輿にのりゃいいものを、こーんな所で何をしてるんだか。
正直、今日は驚いたわ。」
「喧嘩なら買ってる暇無いので失礼します。」
「NYの道明寺さんに今日のこと、お伝えしようかしら。」
「どうぞご勝手に!!
あんた達、いつまでチクリなんかやるつもり?成長しなよ。」
「あら、その言葉、そのままお返しするわ。
大人しく道明寺さんのとこに行けばいいのに、花沢さんまで取り込んで、今さらクラブですって?!」
「っ!!」
退散しようと踵を返すと、目の前に上沼さんと友里ちゃんが唖然とした様子で突っ立っていた。
背中側からなおも聞こえる女狐達の言いたい放題の暴言。
「ちょっと、牧野さん!言っとくけど、F4の仲を裂くのはもう止めてよね。」
「そうよ、節度をもたれたら?!」
「二股なんて!」
目の前で固まってる様子の二人と視線が合っても、私は鬼の形相だったかも。
すると、上沼さんがつかつか歩いてきて、握り締めていたこぶしの腕をスッと取る。
「行くぞ、気にすんな。」
廊下を歩きながら、質問された。
「いじめに遭ってた?昔?」
とにかく頷く。
「スゲーな、あの子達。」
「冗談じゃない・・ったく、あいつらぁー。」
私は全身から怒りのオーラが出るくらい気持ちが高ぶっていて、笑顔で返す余裕も無く、俯きながら頭の中で繰り返し出てくる台詞も口に出てたよう。
『なんで、二股になるのよ!バッカじゃないのぉ?』
「色々、大変そうだな、つくしちゃんは。」
顔を上げると、上沼さんが白い歯を見せ笑ってた。
「道明寺って、あの道明寺グループの?遠距離恋愛の相手が。」
頷いた。
上沼さんはそのまま人気の少ない場所まで私を引っ張り、穏やかに口を開く。
「やっぱ、そうか。
つくしちゃんは・・・ホントなら、こんなとこ居る女の子じゃない訳だ。」
「そんなこと言うの止めてください。
あたしはあたしで、あいつはあいつ。・・・なんです。」
「随分、溜まってんじゃないの?
向こうに迷惑かけないよう頑張りすぎた?
遠恋は割切らんと長続きしない、けど反対に割切り過ぎても気持ちが冷めたりする、タイミングがややこしいもんな?
相当意地っ張りの頑張り屋さん、だろ?」
そんな風に私を見ていてくれたんだ。
私から見るとすごい大人な上沼さんの言葉はなんだか沁みてくる。
ポカーンと口を開けながら、上沼さんの顔を見つめていた。
「ウククッ・・口開いてる。」
「あっ///いや、だっ・・」
「明日、夜ひま?」
「・・・。」
「門脇と優紀ちゃん誘って、飲むか?
そん時、話きいてやるから。」
断る理由はなくて、むしろ胸の内を全部話してみたらどうなるだろう?と思った。
つづく
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