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    <title>HappyEverAfter</title>
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    <description>花沢類ｘ牧野つくし</description>
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    <dc:date>2018-05-19T09:37:13+09:00</dc:date>
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    <title>Happy Ever After 34</title>
    <description>
happyeverafter34

34.

それから一週間。
長い長い一週間だった。


ふらりと戻ってきた類。
聞けば、ボランティアに汗を流していたそうな。

桜子も滋さんも、優紀も。
西門さんも、美作さんも・・・どれだけ心配したと思ってんの？
腱鞘炎になるくらいメール打って、死体があがったっ...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter34</title>
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<p>34.<br />
<br />
それから一週間。<br />
長い長い一週間だった。<br />
<br />
<br />
ふらりと戻ってきた類。<br />
聞けば、ボランティアに汗を流していたそうな。<br />
<br />
桜子も滋さんも、優紀も。<br />
西門さんも、美作さんも・・・どれだけ心配したと思ってんの？<br />
腱鞘炎になるくらいメール打って、死体があがったって聞いたら、一応、確認して。<br />
<br />
本当は私の方が、よっぽど、『消えてしまいたい！！！』って落ち込んでたのに、実際に類が消えちゃったから、全くそれどころじゃなくなった。<br />
<br />
朝から真相を聞き出すために類を取り囲むらしく、私も連れてかれた。<br />
直接、顔を見るのは、道明寺の再会パーティー以来で緊張する。<br />
<br />
<br />
<br />
「おい、類。<br />
今日はちゃんと説明してもらおうか？」<br />
<br />
「だから、言ったでしょ。<br />
山にボランティアしに行ってきたって。」<br />
<br />
気が抜けるほど、飄々としたいつもの類が戻ってる。<br />
安心したけど複雑。<br />
<br />
「山ってなんだよ。」<br />
<br />
「木こり。」<br />
<br />
首をグルグル回しながら、類が眠たげに答える。<br />
<br />
「環境保全のボランティアだってさ。<br />
間伐したり、木槌をふり落としたりして、結構な力仕事だったよ。」<br />
<br />
「お前、そんなことに興味あったんか？」<br />
<br />
「いいでしょ、別に。」<br />
<br />
「んじゃ、家の人にも内緒で行ったのはどういうことですか？」<br />
<br />
桜子がイライラした口調で聞いた。<br />
<br />
「うん、俺、連絡するの忘れてた。」<br />
<br />
「「「「はあ～っ？？？」」」<br />
<br />
「もう、知らない、気が抜けた！<br />
類くんも、つくしも、それに、司だって電話に全然出ないし。<br />
もう三人とも勝手にやって！って感じだよ。」<br />
<br />
そう言って、滋さんは床に両足を伸ばして座り込んだ。<br />
<br />
「道明寺さんとは？」<br />
<br />
桜子がすかさず聞いた。<br />
<br />
「司？うん、会ったよ。」<br />
<br />
「「「「・・・・。」」」」<br />
<br />
「思い切り、殴ってきた。俺、殴られっぱなしだったからね。」<br />
<br />
へっ・・・！！？？<br />
<br />
「んで、また、ボコボコニ殴られて、おしまい。」<br />
<br />
「「「「「・・・・。」」」」」<br />
<br />
皆、事の真相がよくわからないといった感じで、身をのりだして聞いていた。<br />
そりゃ、私たちの三角関係がどうなるのかも気が気じゃないよね。<br />
<br />
そうだよね、ずっと見守ってくれた皆には私も言わなきゃならないことがある。<br />
類の騒動で、パーティーの後日談はお預け状態のままだ。<br />
驚かせたし、がっかりもさせて、きっと、心配してくれてるから。<br />
<br />
<br />
「滋さん、ごめんなさい。<br />
皆も・・・こないだの折角のパーティーを台無しにしてごめん。<br />
でも、皆に隠していた事なんて何もないよ。<br />
あれから、道明寺と話せたの。<br />
嫌いになったわけじゃないし、裏切ってたつもりなんて一つも無かったけど、ただ、類が大事な気持ちは変わらない。<br />
このまま道明寺との婚約を続けるわけはいかないって思ったの。<br />
解消してもらった。<br />
報告しておくね。」<br />
<br />
「で、司は了解したんか？」<br />
<br />
「・・・、少なくても、ちゃんと聞いてくれた。」<br />
<br />
「やっぱり残念です。<br />
わがまま通されて、道明寺さんがかわいそう。」<br />
<br />
「まっ、結局は二人の問題だろ。<br />
当事者でない俺らが口出し出来ることって、まあ、囃し立てることくらいだしな。」<br />
<br />
「だからって、類さんと付き合いをするって、どうなんですか？」<br />
<br />
「桜子、お前、自分の事は棚に上げてよく言うぜ。」<br />
<br />
「私はいいんです。牧野先輩だから、応援してたのに。」<br />
<br />
「ちょっと待って、類とは友達。これからも、ずっと！」<br />
<br />
「なんだ、それ。訳わかんねえ。」<br />
<br />
類の視線をバチリと受け止めて、しばらく無言で見つめ返す。<br />
道明寺邸ではどんな話をしたのだろう？<br />
それに、山？って・・・。</p>
<p>パンッ♪<br />
<br />
<br />
私と類が見つめ合うのを、手拍子でプチっと切断したのは西門さん。<br />
<br />
「お前ら・・・久しぶりだからって、そんなに乳繰り合うな！」<br />
<br />
「はっ？・・・そんなことしてないでしょうが、西門さん！」<br />
<br />
「なーんか、そう見えるんだな。<br />
まあ、男と女がくっつくの離れるのって、ついて回ることだし。<br />
どうしようもない事もある。<br />
とにかく、俺らは見守るとするか。」<br />
<br />
「けど、司、ＮＹで暴れてるんじゃないか？」<br />
<br />
「まっ、今度、様子見てこようぜ。どうせ、暇だし。」<br />
<br />
<br />
<br />
「牧野、久しぶり。」<br />
<br />
突然、類がお馴染みのニコリと優しい微笑みを口元に浮かべた。<br />
<br />
ギョ。<br />
<br />
「うん、久しぶり。」<br />
<br />
「だよね、元気だった？」<br />
<br />
そして、また、ほほ笑む。<br />
なんだかスッキリしたように見えるのは気のせい？<br />
<br />
「元気なわけないじゃん。でも、ちゃんとしてるよ。」<br />
<br />
「うん、元気みたいだ。」<br />
<br />
いっぱい聞きたいことがあったけど、ホッとしたから、嫌な質問はお預けにしようと思った。</p>
<p>「あ～、お腹すいた。」<br />
<br />
「じゃ、気分転換に軽井沢の別荘でも行くか？」<br />
<br />
「いいねえ～、ニッシー、そのアイデア賛成！！<br />
行こうよ、皆で。」<br />
<br />
「俺、行かない。<br />
親父に自宅で謹慎しろって言われてる。」<br />
<br />
「マジ？？ハハハッ・・・謹慎処分って、中坊か？？ハッハハハ、笑える。」<br />
<br />
西門さんはお腹を抱え笑っている。<br />
類もバツが悪そうに、唇を尖らせて拗ねているみたい。<br />
悪いことをして類がお父さんに怒られるなんて、すごいレアな事なんだと思う。<br />
でも、ちゃんと叱ってくれるお父さんなんだね。<br />
良かった。<br />
いいお父さんみたいで、本当に良かった。<br />
<br />
<br />
「ねえ、じゃあさ、私、何か作ってあげるよ。<br />
類、悪いけど、台所を少し貸してもらえるように頼んでくれない？」<br />
<br />
「いいけど。」<br />
<br />
「庶民食か？」<br />
<br />
「っさい！黙って待ってな。」<br />
<br />
結局、ホットプレートを借りて、類の部屋でお好み焼きを作ることにした。<br />
臭いが付くから嫌だという類を黙らせたのは、私じゃなくて、滋さん達。<br />
一度、そんなことをやってみたかったそうだ。<br />
<br />
家のお手伝いさん達も、楽しそうに道具を運んでくれた。<br />
<br />
「すみません、お手数をおかけして。」<br />
<br />
「類さまがこんなに楽しいお友達をお持ちだとは知りませんでした。<br />
あまりお話をして下さらないので。<br />
最近は大きくなってしまって、どんなお友達がいらっしゃるのかと心配しておりました。」<br />
<br />
類がそのお手伝いさんを、ジロリと睨んだ。<br />
<br />
「ホホホ・・、類さま、申し訳ありません。<br />
つい、おしゃべりが過ぎましたね。」<br />
<br />
お手伝いさんの中に、年齢は４０代後半くらい。<br />
一人だけがエプロンの柄が真っ白じゃなくて、オレンジのお花がいっぱいプリントされたものをしている人がいて、嬉しげにそう答えてくれた。<br />
きっと類の身の回りの世話をずっとしてくれている人なんだろう。<br />
お母さんがいない類にとって、ひょっとしたら、この人は一番お母さんに近い存在なのかもしれない。<br />
<br />
「良かったら、一緒に食べませんか？<br />
類も了解してますし、ねっ！そうだよね、類？」<br />
<br />
そう言って、類に同意を求めた。<br />
<br />
「いいえ、いいえ、とんでもない。<br />
まだ、他の仕事も残っていますし、失礼します。<br />
牧野さま、有難うございます。<br />
この家にこんな日がくるなんて。」<br />
<br />
どうみても、その人は目をウルウルさせている。<br />
<br />
「また、是非いらしくださいませね。」<br />
<br />
リアクションに対し、モゴモゴと恐縮しているうちに、お手伝いさんたちは皆、下がってしまった。<br />
<br />
「あ～あ、類のこと、色々と聞こうと思ったのに残念。」<br />
<br />
またもや、ムスッとしている類。<br />
<br />
「さあ、焼きまくるよ！」<br />
<br />
私はグッと袖をまくりあげて、気合を入れた。<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:35:51+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
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    <link>https://happyever.side-story.net/home/happyever33</link>
    <title>Happy Ever After 33</title>
    <description>
happyeverafter33

33.

外に出ると、雨が土砂降りになっていた。
道明寺のお母さんに、優紀と和也くんの実家まで目をつけられて、心をちぎられる思いで別れを告げたあの日と同じ、冷たい雨。
ずぶ濡れになりながら、黒いフェンス横を小走りで歩いて帰った。


家に着くと、急いで自分の部屋...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter33</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>33.<br />
<br />
外に出ると、雨が土砂降りになっていた。<br />
道明寺のお母さんに、優紀と和也くんの実家まで目をつけられて、心をちぎられる思いで別れを告げたあの日と同じ、冷たい雨。<br />
ずぶ濡れになりながら、黒いフェンス横を小走りで歩いて帰った。<br />
<br />
<br />
家に着くと、急いで自分の部屋のカーテンを閉め、携帯の電源を切り、ベッドにもぐりこむ。<br />
まだ昼前だというのに、外は暗くて私にはちょうど良かった。<br />
頭の中は、道明寺との思い出が次からぐ次へと廻って来る。<br />
英徳高校時代、そりゃ、辛いことがいっぱいあったけど、道明寺と出会えて幸せもいっぱいもらって、皆と笑った思い出が走馬灯のように浮かぶ。<br />
<br />
全ての外界と距離を置きたかった。<br />
自己嫌悪の塊にどっぷりとはまって、こんな自分を見たくないし許せない。<br />
いや、許すまい。<br />
<br />
普通の恋愛をする資格は、私にはもうないよね。<br />
一生独身で尼のように毎日すごせたら、この罪悪感も少しは薄らぐかもしれないけれど。<br />
類も道明寺もいないところで、腰が曲がるまで過ごすに値する。<br />
別の男を好きになるなんて、サイテー浮気女のすることだと思ってた。<br />
そんなサイテーな自分に吐き気さえする。<br />
<br />
道明寺のあの苦しげな声色と悲しげな瞳。<br />
ごめん、本当にごめん。<br />
<br />
道明寺が好きで好きで・・・なのに、自分の勝手で一方的に傷つけた。<br />
こんなことになるなんて。<br />
<br />
『もう消えてしまいたい。』</p>
<p>部屋にこもって４日目。<br />
その間、進が何度も呼びに来たから、誰かから連絡があったようだけど、居留守をきめこんで誰ともコンタクトをとらずに過ごした。<br />
<br />
けれども、いつまでもそうしている訳も行かず、携帯の電源を入れた。<br />
何十件ものメッセージと留守電。<br />
ほとんどがF4とT３から。<br />
類と道明寺を除いて。<br />
ずらりと並んだ差出名を見て、またオフにした。<br />
<br />
重い足取りで登校した。<br />
こんな日に限って、大学前の並木道で西門さんと美作さんに会ってしまう、ひどく因果な運命。<br />
どんな顔して話していいのだか。<br />
けれども、戸惑う間もなく、手を挙げて近づいてきた二人の勢いに自然と足が止まった。<br />
<br />
<br />
「おおおお～、まきの～。お前、返信しろよな！！！生きてたのか？？」<br />
<br />
「で、類は？司は？」<br />
「何があった？？」<br />
「はん？？」 <br />
駆け込むように聞いてきたのは美作さんだ。<br />
<br />
思わず、仏頂面でジロリと睨んだけど・・・えっ、ちょっと待って、今、なんて言った？<br />
<br />
<br />
「お前、類と連絡とったか？」<br />
<br />
「知、知らないけど、・・・何？」<br />
<br />
顔を見合わせる二人。<br />
<br />
<br />
「牧野、あれから司んとこ行ったろ？」<br />
<br />
無言で頷いた。<br />
<br />
「んだろ。そん時、類とも会ったか？」<br />
<br />
無言で首を振った。<br />
会ってないもんは会ってない。<br />
<br />
「とすると、行き違いか。」<br />
<br />
「みたいだな。でも、あいつら二人は会ったんだろ。」<br />
<br />
「どういうこと？類が道明寺の家に一人で行ったの？」<br />
<br />
「司んとこに牧野が拉致られたのを知って、類も行ったんだよ、司ん家。<br />
でも、お前は居なかった。」<br />
<br />
「うん、類は見てない。<br />
ってか、別に拉致られたってわけじゃないよ。」<br />
<br />
「まさか、司、逆上して、類を殺（や）ったんじゃないだろうな。」<br />
<br />
「おい、総二郎、変なこと口にするな。<br />
とにかく、類のやつ、自宅に連絡もなくずっと行方不明のままでさ。<br />
ついに、昨日、親父さんが警察に捜索願いを出したんだ。」<br />
<br />
ビックリして口がふさがらなかった。<br />
<br />
「お前、本当に知らないのか？連絡は一度もしてない？」<br />
<br />
慌てて携帯を引っ張り出して、オンにする。<br />
<br />
<br />
「っケ・・・。こいつ、俺のメールをスルーしてやがった。」<br />
<br />
確認したけど、やはり、並ぶのは類と道明寺＜以外＞の名前ばかり。<br />
<br />
「やっぱ、連絡は来てない。道明寺からもないよ。<br />
どういうこと？何があったの、二人でまた喧嘩したの？<br />
ねえ、道明寺には類は会えたの？で、何か言ってた？」<br />
<br />
「それが、もう日本にはいないらしくて、そこのところは俺らも聞けてない。<br />
どういうわけか、司は拒否ってやがる。」<br />
<br />
「牧野からの電話ならとるかもしれないぜ。かけてみろよ。」<br />
<br />
「えっ？道明寺に？」<br />
<br />
そろって頷く二人。<br />
<br />
「ムリ！！」<br />
<br />
今は、道明寺との関係どころのムードでもない。<br />
でも、でも、ムリだ。<br />
<br />
「薄情なやつだな、類の命がかかってんだぞ。」<br />
<br />
「やだ、冗談でもそんな物騒なこと言わないで。」<br />
<br />
「貸してみろ。代わりにかけてやる。」<br />
<br />
携帯を奪われて、アドレス帳からどっかに電話をかけている。<br />
長い呼び出し音がここまで聞こえるけれども、キャッチする音は聞こえない。<br />
<br />
<br />
「ダメだ。」<br />
<br />
「じゃ、次は、類！」<br />
<br />
「おう。」<br />
<br />
<br />
また電話をかけるけれども、応答なしみたい。<br />
もう、どういうこと？<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:35:00+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
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    <title>Happy Ever After 32</title>
    <description>
happyeverafter32

32.

翌朝は明け方から雨が降っていて、その雨音で目が冴えてしまう。
家を出ると、家の前に一台の黒光りする長い車。

運転席のドアが開き、パっと大きな黒い傘が広がると、出てきた運転手さんにうやうやしくお辞儀をされた。

「牧野さま、お早うございます。司様がご自...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter32</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>32.<br />
<br />
翌朝は明け方から雨が降っていて、その雨音で目が冴えてしまう。<br />
家を出ると、家の前に一台の黒光りする長い車。<br />
<br />
運転席のドアが開き、パっと大きな黒い傘が広がると、出てきた運転手さんにうやうやしくお辞儀をされた。<br />
<br />
「牧野さま、お早うございます。司様がご自宅でお待ちです。<br />
どうぞお乗りください。」<br />
<br />
急遽、今日の授業はキャンセルだ。<br />
通されたのは、主（あるじ）の戻った東側の角部屋で、あの懐かしいベッドやソファーはちっとも変わっていなくて、スリリングに過ごした日々が嫌でも脳裏に浮かんだ。<br />
<br />
ただ、デスクの向こうで誰かとずっとウェブ会話している道明寺は、相手の出方を辛坊強く待つ合間をとるビジネスマンで、そこだけ書き換えが必要だった。<br />
威圧的で高飛車な話し方はそこには無く、鉄の女、道明寺のお母さんとはまた違う仕事が出来る感じがする。<br />
どんな相手とどんな話なのか私にはさっぱりわからない。<br />
そして、道明寺が本当に仕事をこなせてるのかも、正直わからない。<br />
<br />
なかなか切り上げられないのだろう。<br />
会話しながらも、私に向かって人差し指を上げ、配慮を見せる道明寺。<br />
<br />
顔色一つ変えないんだね。<br />
でも、それで少しだけ緊張が取れた。<br />
怒り心頭で、冷静に話せるのか不安でいっぱいだったから。<br />
<br />
<br />
もう、この仕事が当たり前の作業で、日常のように自然で、今更ながらずいぶんと社会人が板について見えてくる。<br />
<br />
私は笑顔を作り、身体を反転させた。<br />
部屋の壁を眺める。<br />
昔、先輩の指導のもと、磨いた覚えのある置時計。<br />
そうそう、キャビネットに入った高そうなエアプレインの模型も覚えてる。<br />
道明寺邸のこの部屋は、とてもなつかしい。<br />
<br />
あの頃と同じ部屋。<br />
眼をつぶれば、道明寺の熱い瞳にドギマギした日々が昨日のことのように思い出される。<br />
<br />
でも、現実は・・・昨日の夜、類の鮮血と道明寺の拳を見て、本当に人生最悪の夜を過ごしたばかり。<br />
<br />
学生の身分に守られた類も私も、社会に対してまだまだ子供で許される。<br />
道明寺だけが早くに行った事情も仕方なくて、こうなったのはホントに仕方なかったのか。<br />
<br />
もし、私が一緒にNYへ行ってたら？<br />
何度も自問した問いの答えは、いつもあの選択は間違ってなかったと。<br />
「遠距離恋愛大丈夫？」、誰かに聞かれて初めて気づくほど、私たちには何の障壁にならない自信があったはず。<br />
強い思いがあって、疑わない二人の未来があったのはずなのに。<br />
<br />
どうすればいいの？<br />
<br />
<br />
「牧野、待たせてすまない。」<br />
<br />
道明寺がすぐ横に立っていた。<br />
<br />
「朝飯食ったか？」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
身長１８５センチ。<br />
高いところからじっと見下ろされ、しばらくお互い見つめ合っていた。<br />
<br />
きれいな野獣という印象はそのままに、優しくなったその瞳は落ち着きはらっていて、一つの欠点もないような容姿の男。<br />
<br />
おもむろに道明寺の腕が伸びてきて、すっぽりと腕の中で抱きしめられた。<br />
道明寺のコロンの香りだ。<br />
大きな、大きなため息と、優しく頭をなでる大きな掌の重み。<br />
なんども夢見たことが現実に起きている。<br />
<br />
「牧野・・・。」<br />
<br />
懐かしく響く道明寺の声。<br />
胸から伝わる振動は何度も覚えのある暖かいもので、何よりの幸福を感じる場所だった。<br />
忘れた訳ではいない。<br />
<br />
けど、なのに、胸がひどく痛む。<br />
胸からも、眼からも、鼻からも、あらゆる触れた所から、剣山を突き刺されたようなピリピリとした痛みを感じる。<br />
<br />
言葉にする前から痛みに胸をしめつけられて、涙が出そうになってくる。<br />
<br />
「あの、・・・あのね。」<br />
<br />
「昨日は俺が悪かった！どうかしてたんだと思う。」<br />
<br />
「えっ・・・？」<br />
<br />
「反省した、類にも謝る。」<br />
<br />
「謝るって・・・あんた。」<br />
<br />
「仲直りしたかったら、謝るもんだろ。」<br />
<br />
「一番、苦手な事でしょ？<br />
　いや、そういう事じゃなくて、あの・・・さ、道明・・っ」<br />
<br />
「・・・っさい。」<br />
<br />
すると、これ以上聞かないとばかりに、道明寺は私の耳に熱い息を落とし、そのまま首筋を咥える込むように野性的なキスをする。<br />
面食らう。<br />
<br />
そのキスは、耳元へ、頬へ、どんどん場所を移し、ついには私の唇を飲み込んでいく。<br />
離さないとばかりの包み込むような大きなキス。<br />
大切に愛おしむような温くて。<br />
道明寺の体温が私の身体にダイレクトに伝わって、足がその場から生えてきたようにビクとも動かなくなった。<br />
<br />
道明寺の舌先は止まらず、簡単にこじ開けられて、追いつめられて、とうとう逃げ場を失うと、わけわからないうちに肩から力が抜けてしまう。<br />
眩暈がしそうな熱いキスに額のあたりでヒリヒリとした警告を感じた瞬間だった。<br />
<br />
キスが止まる。<br />
唇が離れて、私を見つめる道明寺の眼差しと交差した。<br />
<br />
「お前、なんで泣いてる？」<br />
<br />
「えっ？」<br />
<br />
あわてて頬に手をあてると、確かに涙がつたっていた。<br />
<br />
「ヤダっ、なんでだろ・・・。」<br />
<br />
「そんなに嫌か？」<br />
<br />
道明寺の瞳は怒っているようには見えない。<br />
<br />
「わ・わかんないよ。<br />
でも、多分、あんたのせいじゃない。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
<br />
早く！！早く、とにかく、言わなきゃ。<br />
ハッキリ言わなきゃ。<br />
正気なうちに言葉にしておかなきゃ。<br />
でも、焦って言おうとする側から、涙が堰をきったように溢れ出して邪魔をする。<br />
どうにも止まらなくて、声も出せなくて、顔もあげられなくなって。<br />
<br />
でも、どうしても言葉で伝えなきゃダメ。<br />
眼をつぶって思い切って声を出す。<br />
<br />
<br />
「聞いて！道明寺、私・・・私ね、<br />
今は・・・類が一番大事なの。」<br />
<br />
<br />
一瞬、道明寺の腕の力が強くなった気がした。<br />
けれど、目をあけると、静かに覗き込む道明寺の顔がすぐ目の前にある。<br />
<br />
<strong>「だとしても。」</strong><br />
<br />
空を切るような乾いた声に、目を見開いて見つめ返した。<br />
<br />
「・・・前もそうだったろ、お前はめっぽう類に弱いからな。<br />
でも、必ず俺のところに戻ってくる、お前と俺は結ばれる運命だろが。」<br />
<br />
「違うの。<br />
あんたはずっと先に行っちゃって、あたし、未来が見えなくなってるんだよ。」<br />
<br />
道明寺の両手が私の両肩をグッと掴んだ。<br />
<br />
「なあ、牧野、一緒にNY行かねえか？<br />
すぐに結婚とは言わねえ、まだゆっくりと学生気分を味わいてえだろ？<br />
向こうの大学に入って、好きなように勉強続けろよ。」<br />
<br />
日本での事は全て目をつぶるってこと？<br />
もう頭ごなしに怒鳴ったり、押し付けたりしないんだね、道明寺。<br />
<br />
頭ではわかっている、答えはイエスというべきだって。<br />
二人の未来を選ぶなら、最善な答えだと。<br />
なのに、イエスと言えない性分がわかってるでしょ。<br />
<br />
「ごめん、出来ないよ、類を置いていけない。<br />
こんな気持ちで道明寺といられない、婚約は白紙に戻して、お願い。」<br />
<br />
道明寺のこめかみが一瞬ピキっと動く。<br />
黙りこくったかと思うと、少し怖い顔して口を開いた。<br />
<br />
「ついて来い。」<br />
<br />
王様が家来に命令するように、断ることなど微塵も予想していない口ぶりに聞こえた。<br />
類をなじった昨夜の道明寺を思い出し、身体に力が入る。<br />
<br />
<br />
「・・・っ。」<br />
<br />
<strong>「来いっ。」</strong><br />
<br />
二回目は更に強い口調だった。<br />
ブルブルと頭を大きく振って後ずさる。<br />
<br />
<br />
「&hellip;道明寺、私は類の側にいたいの。」<br />
<br />
「お前、言っている意味わかってるのか？牧野。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「このタイミングが"最後"になるぞ。」<br />
<br />
道明寺は怖い目つきで上から見ている。<br />
<br />
最後！？？<br />
返事の重みに今更ながら、唾をのみ込む。<br />
だからって、先のことを避けるために、動けない<br />
<br />
<br />
道明寺に向かって頭を大きく縦に振った。<br />
<br />
道明寺はソファーに腰をおろし、目をつぶり黙りこくる。<br />
そして、合図のように机を叩いて目を開けた。<br />
<br />
「お前、そんなに類が大事か？好きなのか？離れられないくらい。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
それは、苦しげに怒りのにじむ声色だった。<br />
<br />
『そう。<br />
多分、そう。<br />
友達の好きじゃない、愛おしい気持ちの好き。<br />
ごめん、道明寺、本当にごめんなさい。<br />
サイテー、あたし・・・。<br />
もう、こんな自分がいやだ。』<br />
<br />
こんな時に、道明寺の声が素直に入ってくる。<br />
<br />
「俺を幸せにしてくれるんだろ！？牧野は。」<br />
<br />
道明寺の前に立つ資格さえない。<br />
<br />
「...ごめん。」<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:34:02+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>boa</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://happyever.side-story.net/home/happyever31">
    <link>https://happyever.side-story.net/home/happyever31</link>
    <title>Happy Ever After 31</title>
    <description>
happyeverafter31

31.

床には道明寺の吐き捨てた言葉の余韻が、なおも重く立ち籠めていた。

なんて重たい空気なんだろう。
一息吸うのも肩に力が入ってしまう。

ド派手に男二人が喧嘩して、口元を拭えば鮮血が付く、まるでヤクザ映画のようだった。
そう、映画の中の出来事だったらどん...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter31</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" /><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>31.<br />
<br />
床には道明寺の吐き捨てた言葉の余韻が、なおも重く立ち籠めていた。<br />
<br />
なんて重たい空気なんだろう。<br />
一息吸うのも肩に力が入ってしまう。<br />
<br />
ド派手に男二人が喧嘩して、口元を拭えば鮮血が付く、まるでヤクザ映画のようだった。<br />
そう、映画の中の出来事だったらどんなに良いか。<br />
ここにいる皆、「誰か止めて！」なんて言葉と裏腹の、むしろ、嵐が過ぎるのを呆然と待ってた。<br />
途方にくれた顔して。<br />
一様に納得できない様子で、「いつから？」って顔にそう書いてある。<br />
皆の信頼も損ねてしまったんだね、私。<br />
<br />
こんなにもひどく重たく秒針が動くのも。<br />
無残な類をこうして見つめる訳も。<br />
これは当然の報いだから。<br />
<br />
<br />
<br />
・・・長い間、うっすらと予感し恐れ続けてたのに、結局、最悪の状態。<br />
側にいる類の存在が大きくなって、遠くの道明寺が見えなくなって、少しづつ変わった立ち位置に目を背けてた。<br />
「類は友達だから。」と閉じ込めて、ただ逃げていただけなのに。<br />
道明寺には昔っから言われてた、フラフラよそ見して信用ならないやつだって。<br />
その通りの人間だったんだよ、私。<br />
<br />
<br />
<br />
類が大事。<br />
それはハッキリしていて揺るがないから仕方ない。<br />
運命的で初恋のヒトでもある。<br />
もう、どうしたらいいかわからない。<br />
<br />
結局、道明寺を傷つけ、皆も傷つけ、もうどこにも着地点はないように見える。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
目の前には、やるせなくズボンからはみ出た白いシャツ。<br />
<br />
「立てるか？類？」<br />
<br />
その白いシャツに付いたばかりの赤い筋を、ただ見つめていたのは私だけだったのかな。<br />
美作さんが類に声をかけると、続いて西門さんの声も聞こえてきた。<br />
<br />
「まあ、っな、類。<br />
司が頭に来たら何するかわかんねえのは昔からだ、変わってねえよな。<br />
明日になりゃ、話せるようになってるって、心配すんな。」<br />
<br />
美作さんが類を抱え込むように席に連れ戻し、グラスに茶色い液体を注いだ。<br />
<br />
「類、まずは消毒するか。」<br />
<br />
促されるままグラスを握る。<br />
一同の視線を浴びる中、類はその液体を一気に飲み干した。<br />
<br />
「・・・ッツ・・イテ。」<br />
<br />
手の甲で口角を押さえつけつつ、つがれたお代わりを続けてかぶるように一気に飲み干す。<br />
<br />
「・・・ッック。」<br />
<br />
「おい。」<br />
<br />
待たずして、ボトルをひっつかんで、ラッパ飲みする類。<br />
<br />
「ちょ、ちょっとー、類くん！やめなよ！」<br />
<br />
滋さんの驚く声が、あまりに大きく響いたのが印象的だった。<br />
<br />
ただよう沈黙を破ったのは西門さんで、それも誰もが頷く言葉で。<br />
<br />
「俺だって潰れてえよ。<br />
司と牧野は・・・、俺らの・・・俺らにとっちゃあ、絶対だっただろ。<br />
司が暴れるのも無理ねえ。<br />
やっぱり・・・、お前ら・・・そうだったんだな。<br />
はあ～、・・・ったく、あ～、何やってたんだか、俺は～。」<br />
<br />
「ねえ、本当はどうなの？<br />
類くんと付き合ってるの？ねえ、つくし。」<br />
<br />
「ま・・さか。」<br />
<br />
自分の声と思えないほど力ない声。<br />
滋さんの目をまともに見返せない。<br />
<br />
「つくし、もし、それが嘘なら許さないよ。<br />
司にはつくししか居ないんだよ！！運命の人だって言ってたじゃん！」<br />
<br />
「ごめん、皆。<br />
皆の気持ちを裏切って、本当にごめんなさい。<br />
でもね、あたし・・・、類のこと放っとけない。」<br />
<br />
<br />
「それって、司より類くんが大事ってこと？<br />
司より類くんが好きってことなの？？」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「はっ？マジかよ。」<br />
<br />
「ねえ、つくし、ちゃんと答えて！」<br />
<br />
類のサラ髪が揺れ、茶色の瞳が強い光で私を見上げていた。<br />
痛々しい口元を隠すように肘で抑えながら。<br />
<br />
手に取るようにわかる、類が言いたいこと。<br />
『間違うな！』『笑った顔が好きだから。』って付け加える、いつものように。<br />
<br />
でも、自然に心が、手が動いてしまう。<br />
明白な意味を持って・・・側にあるその手に触れた。<br />
類に伝えるつもりで、その心配そうな類を安心させたくて、大きくゆっくりと頷いた。<br />
少しでも微笑んでみる。<br />
<br />
いなや、美作さんの大げさな溜息と滋さんの立ち上がる音。<br />
<br />
「私、司んとこに行ってくる。」<br />
<br />
滋さんはそう言いながら、鉄砲玉のように飛び出していった。<br />
<br />
<br />
<br />
「つくし、今日はもう失礼しよう。」<br />
そう言い、私の腕をつかんで引っ張るのは優紀だった。<br />
<br />
「桜子さん、後の事、お願いします。<br />
類さんは、西門さん達がいるから大丈夫。<br />
帰ろう、ねっ。」<br />
<br />
類の視線にひどく後ろ髪を引かれる。<br />
けれども、優紀はすごい力で私の腕を離さなかった。<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:33:10+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>boa</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://happyever.side-story.net/home/happyever30">
    <link>https://happyever.side-story.net/home/happyever30</link>
    <title>Happy Ever After 30</title>
    <description>
happyeverafter30

30.

二次会のクラブは若い子がいく普通の店だったけれど、だだっ広いＶＩＰルームを貸切にしていた。
コの字型のソファーの中央に座る道明寺が、隣の席を叩きながら私を呼ぶ。

「牧野～、お前はここだろ。」

優紀と桜子の間の席を立ち、道明寺の隣へと移動する。
座る...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter30</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" /><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>30.<br />
<br />
二次会のクラブは若い子がいく普通の店だったけれど、だだっ広いＶＩＰルームを貸切にしていた。<br />
コの字型のソファーの中央に座る道明寺が、隣の席を叩きながら私を呼ぶ。<br />
<br />
「牧野～、お前はここだろ。」<br />
<br />
優紀と桜子の間の席を立ち、道明寺の隣へと移動する。<br />
座るやいなや、肩を抱き寄せられ耳元で囁かれた。<br />
<br />
「もう間違えるなよな。」<br />
<br />
「ごめんごめん、つい。」<br />
<br />
カクテルの口当たりがよくて、一杯目がすぐに空になる。<br />
優紀が道明寺にＮＹについて聞いたら、道明寺は饒舌に答えた。<br />
<br />
「デモ、道明寺さんの会社は巻き込まれたりしなかったんですか？」<br />
<br />
「OCCUPY WALL ST (オキュパイ・ウォール・ストリート)って、富裕層がたった１％しかないってのが本当の不満だろ、俺からいわせりゃ、もっと自分を知れってんだ。<br />
働く意欲の無い奴が、真面目に働いて税金ドカッと納めてる奴を責めてどうする。<br />
ドル箱つぶして、国力落ちて、更に失業率が上がるぞ。<br />
弱肉強食でビックになれた国が、今さら・・・ケッ、本末転倒だろ。」<br />
<br />
「そうですよね。」<br />
<br />
「仕事がない？かわいい従業員の首をやみくもに斬りたい企業がどこにある？<br />
奨学金の返済?　最大限の補助してやってる。<br />
これ以上、甘えるなってんだ。」<br />
<br />
「デモって乱暴な破壊活動じゃなくて、今回は冷めた活動だよな、司の会社、火炎瓶投げられたりしたか？」<br />
<br />
道明寺が手をヒラヒラ振る。<br />
<br />
「ＳＮＳとかのツール使って扇動やってんだろ。」<br />
<br />
「そうだよ、東京でもあったよなー。」<br />
<br />
美作さんと西門さんも加わって話がしばらく続いた。<br />
類は滋さんの横、一番遠い席に座って居る。<br />
うつむき加減でグラスの水割りか何かを手に握りながら。<br />
<br />
その時、滋さんがごそごそカバンの中を触って振り向くや、立ち上がった。<br />
<br />
「これ～、女の子達だけにお土産～。」<br />
<br />
ＧＩＯＲＧＩＯ　ＡＲＭＡＮＩと書かれた、手のひらサイズの黒い紙袋を配ってくれる。<br />
<br />
「今、円高でしょ。<br />
イタリアに遊びに行ってきたんだけど、安いのなんのって。<br />
滋ちゃん、時計を３つも買っちゃったよ！」<br />
<br />
「そういえば、ユーロ大丈夫かよ。」<br />
<br />
と西門さん。<br />
<br />
「あきらんとこ、あっちは市場が大荒れだろ、このままギリシャがデフォルトでもなれば、イタリア支店もヤバイだろ。」<br />
<br />
とは道明寺。<br />
あれまあ・・・デフォルトなんて単語、普通に使うんだねー。<br />
<br />
「日本の店にも波及してくるんだろうな。<br />
まあうちは比較的、円建て決済比が高いから本業の方で踏ん張るのかな。」<br />
<br />
「え～、株が下がったら困るよ。<br />
滋ちゃんのお小遣いで、司んとことあきらくんとこと類くんとこの買ってんのに。」<br />
<br />
「おい、類！ＳＧが格付け落とされただろ。」<br />
<br />
道明寺がうつむく類に話しかける。<br />
<br />
「え？ＳＧ？・・・ソシエテ・ジェネラルのこと？」<br />
<br />
「ああ、ギリシャ国債を大量に保有してるからな、フランスは。<br />
まず飛び火するって噂、本当らしいぜ。」<br />
<br />
「知らない・・・サルコジが何か考えてくれるでしょ。」<br />
<br />
「なんだよ、それだけかよ。」<br />
<br />
「まっ、ろくすっぽ日本語がしゃべれなかった司が経済を語るまで成長してくれて、お兄さんは嬉しいよ！」<br />
<br />
西門さんが道明寺の肩に手を置いて、泣く振りをしてみせる。<br />
<br />
「だから、俺には兄はいないって！」<br />
<br />
「同意！！！さすが、司！」<br />
<br />
と滋さん。<br />
類はまたグラスをお代わりして、新しい飲み物を手に取った。<br />
<br />
その時、道明寺が急に立ち上がった。<br />
<br />
「そうだ、ちゃんと礼を言ってなかった。<br />
これまで牧野が色々世話になった、お前らには感謝してる。<br />
総二郎にもあきらにも。<br />
それから、類。<br />
俺が頼めるのはお前らだけだから。」<br />
<br />
道明寺はまず、西門さんと美作さんと乾杯して、類に向かってグラスを上げた。<br />
<br />
「な、類！」<br />
<br />
類はのっそり顔をあげ、グラスを持ち上げる。<br />
<br />
「お前も立てよ、乾杯だ。」<br />
<br />
<br />
<br />
そして、類が立ち上がりグラスを掲げた間際、時間にして１・２秒、私と類の視線が絡み合う。<br />
ちょっと寂しそうな瞳がサラ髪の奥からのぞける。<br />
長いテーブルを疎ましく思った。<br />
いつもなら、隣で元気ない類を小突いてでも笑わせるのに、この席だと遠すぎて不自由だと思った。<br />
形の合わない歯形みたいに、痛こそばくて変な感じ。<br />
<br />
ふと、肩に温かい手が、道明寺の手がのって、思わず振り返る。<br />
道明寺が真顔になって私を見ていた。</p>
<span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>「お前ら二人、おかしくねえか？」<br />
<br />
「？！！」<br />
<br />
「さっきから見てりゃ、二人して意識しあってねえ？」<br />
<br />
「べ・べっ・・・。」<br />
<br />
「おい！」<br />
<br />
音が消えたように緊迫した空気が張り詰め、皆の視線の先が類に集まった。<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「おい！類！なんか言え！」<br />
<br />
<br />
<br />
「何を言ったらいいの？」<br />
<br />
類が重たそうに口を開く。<br />
<br />
「お前、もしかして、牧野の事、まだ諦めてねえのかよ。まさかだよな？」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
しびれをきらした道明寺は居並ぶ旧友の前を大またで通り抜け、類の横の空いたスペースに躍り出た。<br />
そして、今にも掴みかからんばかりに類に詰め寄る。<br />
<br />
「どうなってんだ！お前ら！！」<br />
<br />
道明寺が大声で怒鳴った。<br />
<br />
「っちょっと！道明寺！止めてよ！早合点だって。<br />
あたしと類は友達だよ、何も変わってないってば。」<br />
<br />
「友達なら、普通にしゃべれるだろうが。<br />
まるで、痴話喧嘩中みたいにチラチラ探り合ってんじゃねえ。<br />
おい、類！<br />
だいたい、なんでお前が牧野とずっと一緒なんだ、ずっと近すぎるんだよ！<br />
そっから、気に入らねえ！」<br />
<br />
「司、まあまあ、類は牧野に頼まれて入っただけだから、そうカッカすんなって。」<br />
<br />
とは西門さん。<br />
当の類はうつむいたまま、顔を上げようともしない。<br />
<br />
「なら聞く。<br />
俺と牧野の結婚、喜んで祝福してんだよな？類、言えよ！」<br />
<br />
類は顔を上げ、垂れた前髪の奥から悲しそうな瞳で私を見つめた。<br />
そして、頭を垂れて一言。<br />
<br />
「ごめん、司・・・。」<br />
<br />
道明寺のコメカミに血管が浮き上がる。<br />
<br />
<br />
<br />
「な・な・なんだよ、ごめんって・・・ざけんな。」<br />
<br />
話が最悪の方向へ流れていってる、どうにかしないと。<br />
<br />
「道明寺、類は悪くないって。<br />
あたし達、何もないよ。<br />
お願いだから冷静になって。」<br />
<br />
「俺はずっと冷静だ。<br />
呆けてるのはどっちだ？は？<br />
牧野、今日、ずっと誰を見てたか言ってみろ。<br />
久しぶりに帰ってきたのに、この歓迎かよ。<br />
恋人に対してこの仕打ち、あんまりじゃねえか？」<br />
<br />
「止めろ、牧野は悪くない。」<br />
<br />
「はあ？何だよ、類。<br />
二人してかばいあって、アホくさ。<br />
言いたいことあんなら言ってみろ、聞いてやる。」<br />
<br />
「ち・ちがうの！<br />
類は今、大変な状況なのよ。<br />
だから、心配で気になってたっていうか、放っておけないっていうか。」<br />
<br />
「大変？」<br />
<br />
「司、まあ落ち着けよ。<br />
再会の夜だぜ、そんな話は後でゆっくり聞きゃあいいじゃねえか。<br />
とにかく、こっち戻って来い。座って飲もうぜ！なあ。」<br />
<br />
「総二郎、悪いけど、膿は気付いた時に出さなきゃなんね。<br />
でないと、いつまでも治るもんも治んねえし、始まんねえからな。」<br />
<br />
「おぉ、司・・・。（&larr;説得されて感嘆する総二郎）」<br />
<br />
「で、類、大変って？」<br />
<br />
類は目の前にいる道明寺に向かい顔を上げる。<br />
無言のまま数秒、二人は目を反らさずに向かい合っていた。</p>
<span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>「殴ってくれ。」<br />
<br />
「・・・殴られるような覚えがあるのかよ。」<br />
<br />
「友達として最低だから、俺。」<br />
<br />
「・・・？。」<br />
<br />
「女として見てる・・・今までずっと。」<br />
<br />
<b>パッコーン</b><br />
キャー<br />
<br />
類の言葉が終わるやいなや、道明寺の一発目、右拳が類の頬に入る。<br />
そして、両手で類の胸倉を掴んで、睨みつけた。<br />
<br />
「お前、よくも今まで飄々と俺と話せてたよな。」<br />
<br />
「・・・ごめん、つかさ・・・。」<br />
<br />
<b>バッコーン、バッコーン</b><br />
<br />
道明寺の二発目・三発目・・・類の頬にパンチが強烈に打ち付けられて、弾みで床に倒れこんだ類の上に、更に乗りかかって四発目・五発目。<br />
<br />
止めて―――、誰か―――！<br />
<br />
<br />
類は一度振り上げようとした腕をダランと下げ、人形のようにじっと動かずされるがまま。<br />
無抵抗でいるつもりなんだ、バカ！<br />
<br />
「止めて下さい！！早く！」<br />
<br />
「あきらくん！！門っち！類くんが死んじゃうよ～！」<br />
<br />
「道明寺、止めて　――――　！！」<br />
<br />
<br />
すっかり頭に血がのぼってる道明寺に声は届かない。<br />
殴られる音と呻く声が響く。<br />
側にあったグラスが落ちてガチャンと派手に割れる。<br />
類の唇から赤い鮮血が流れ、サラ髪は乱れ、頬は赤く広がり始めて、それでもなお殴られっぱなしでいる類。<br />
どうして抵抗しないのよ、痛いでしょ。<br />
心はもうボロボロに傷ついて弱りきってるはず。<br />
お母さんのことで悩んで苦しんでた。<br />
なのに、身体までボロボロにしてどうすんの。<br />
これ以上、自分を痛めつける必要なんてないよ、もう傷つかないで！見てられない！<br />
<br />
<br />
「類！！類！！！」<br />
<br />
類の名前を叫んでいた。<br />
西門さんと美作さんが二人がかりで道明寺を類から引き離す。<br />
<br />
<br />
「やっぱりこんなこった！<br />
お前に任せるんじゃなかった！裏切り者！」<br />
<br />
押さえつけられた道明寺は類に罵声を浴びせる。<br />
<br />
<br />
類の手は震え、頬が腫れ始め、血が頬にも飛び散り、目は朦朧としていた。<br />
私は気づくと類のところへ駆け寄り、横たわる類に覆いかぶさって、そして振り返り見上げる。<br />
<br />
「もう止めて！道明寺！類が欺いてるなら、あたしもだよ。<br />
心は止められない。<br />
どう想っていようが自由でしょ。」<br />
<br />
「・・・は？お前・・・。」<br />
<br />
「友達でしょ？道明寺？」<br />
<br />
私の身体を下から離そうとする腕。<br />
<br />
「牧野、俺の事なんか放っておいて。」<br />
<br />
「放っておけない！」<br />
<br />
「離れて。」<br />
<br />
「イヤ！」<br />
<br />
類を優しく抱きしめた。<br />
痛々しい頬の赤みを見ると、胸が痛んだ。<br />
<br />
「ハッ・・・・三流の寸劇だな。」<br />
<br />
そう捨てゼリフを残し、道明寺は一人その場から出てった。<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:32:13+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
    <dc:rights>boa</dc:rights>
  </item>
  <item rdf:about="https://happyever.side-story.net/home/happyever29">
    <link>https://happyever.side-story.net/home/happyever29</link>
    <title>Happy Ever After 29</title>
    <description>
happyeverafter29

29.

道明寺の一時帰国とお披露目を祝う宴にて、私は初めてあんな真近で芸者さんを見た。
おしろいに真っ赤な口紅、着物や帯やカツラはいかにも動きにくそうで気の毒だと思った。
はずみで顔を拭ったりしないのかな～なんて余計な心配だろうけど。

「芸者さんって、どうし...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter29</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" /><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>29.<br />
<br />
道明寺の一時帰国とお披露目を祝う宴にて、私は初めてあんな真近で芸者さんを見た。<br />
おしろいに真っ赤な口紅、着物や帯やカツラはいかにも動きにくそうで気の毒だと思った。<br />
はずみで顔を拭ったりしないのかな～なんて余計な心配だろうけど。<br />
<br />
「芸者さんって、どうしてあそこまで塗りたくるのかな。<br />
桜子の口紅が薄く見えるわ。」<br />
<br />
「誰と比べてんですか、先輩。<br />
芸者さんの口紅が濃いのは女性のあそこを強調してるって説があるんですよ。<br />
比べるなんてありえませんから。」<br />
<br />
「は？」<br />
<br />
「ほ～ら、よく見てください。唇、あれに似てません？」<br />
<br />
「あんた、それは・・//。」<br />
<br />
言いつつ、口元に目がいって、芸者さんに気付かれた。<br />
<br />
「は～、スイマセン、気いつきませんで。<br />
姉さんは飲みはらへんのですねェ。<br />
ウーロン茶でよろしいですか？」<br />
<br />
「あっ、はい！はい！」<br />
<br />
かしこまってグラスを手に取り差し出してると、斜め向かいに座る類とバチッと目が合う。<br />
<br />
あっ・・・微笑んでる、微笑んでるよ。<br />
ホッーー。<br />
いつもと同じ、よね？―――　良かった。<br />
笑いがとれた、桜子えらい！<br />
あんな別れ方して、どうやって顔合わせようかずっと気をもんでたから。<br />
あの夜の出来事が、全て幻だったらどんなにいいかと。</p>
<span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>東京湾の埠頭に立ったあの夜、涙を隠さない無防備な類を見た。<br />
目に焼きついた。<br />
心が震えた。<br />
今日の類に違和感を覚えるくらい衝撃的で、海の匂いまで記憶にこびり付いてる。<br />
<br />
すごくすごく悲しそうな瞳に、はじめは驚いて、見てたら、もらい泣きしていて。<br />
やっぱり伝染する、無性にたまらなくせつなくなった。<br />
母親を恨んで、我慢して、また傷つけられて。<br />
つらかったね、偉かったねと頭をなぜてあげたかったし、褒めてあげたかったのに、でも、出来なかった。<br />
<br />
類の言葉は更に続いて、それこそ、どうやって取り除けばいいかわからなくて。<br />
<br />
マジ驚いた・・・。<br />
『俺と一緒にこのまま居てよ。』って。<br />
恋人達に人気だというスポットからして、類らしくない行動パターンだった、そういえば。<br />
<br />
すぐに惚（とぼ）けてくるかと期待、いや、懇願したのに。<br />
「冗談だよ、牧野。また引っかかったね。」ってさらりと。<br />
けど、惚けてないのは聞くまでもなく、類の腕の力はかなり強く意思が感じられた。<br />
頭を働かせると、しゃがみこんで一ミリも動けなくなりそうで、何も考えず呆然と突っ立ってた。<br />
はっきりしていたのは、私を想ってくれる気持ちと同じくらい、私にも失いたくない気持ちがここにあるということ。<br />
<br />
いつの間にか、混乱したまま突き飛ばして、無言で背を向ける。<br />
あの夜から今日まで、ちゃんと話せていない。</p>
<span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>そんな風に思い返していると、隣にドサッと座る音がして、あわてて顔を向ける。<br />
<br />
「・・・ったく、あいつらガキみてえに。<br />
携帯なんかで、写真をどう使うってんだ？」<br />
<br />
道明寺が文句言いながら戻ってくるや、男らしい麝香の香りが辺りに漂う。<br />
<br />
「なあ、牧野。」<br />
<br />
懐かしい香りと優しい眼差しに、チクリと一針程度の痛みを覚える。<br />
<br />
「あ～、あの二人は芸者さん呼ぶって、相当張り切ってたからさ。」<br />
<br />
西門さんと美作さんが芸者さんにこだわる理由は多分おふざけしたいだけ。<br />
けど、日本画ポーズを色々お願いして、それを受けてくれる芸者さんもさすがにエンターティナーで、ふざけた絵を作り、笑いを誘い盛り上がる。<br />
そして、西門さんが並んで写メを撮りたいと言いだしてドタバタ。<br />
道明寺はこの手の社交に慣れてるのか、はしゃぐ様子ではなかったけれど、滋さんに強引に引っ張られ、お祭り男達に交じり撮ってきたのだ。<br />
<br />
<br />
<br />
「・・・ったく、めんどくせい。」<br />
<br />
「写真嫌いは直ってないねぇ～。<br />
でもまあ、言うこと聞いて良い子になった！司くん！」<br />
<br />
とは、さらにショートヘアにした滋さんだ。<br />
相変わらず、溌剌とした印象で、どこまで髪を短くするつもりだろう。<br />
<br />
「そう人間、変わるわけねえって。」<br />
<br />
「ううん、司はますます格好良くなったよ、ねっ、つくしもそう思ったでしょ？」<br />
<br />
「ん？・・まあ、背が伸びたんじゃない？」<br />
<br />
煮物をつつきながら、そう流してみた。<br />
<br />
「おっ、わかったか！？お前！０．５センチ伸びてんだよ。」<br />
<br />
「ウッソ！！」<br />
<br />
「まだ大きくなってるの？司・・・。」<br />
<br />
「おお、そうみたいだ。」<br />
<br />
「じゃあ、類くんは？バスケしてると背が伸びるって言うじゃん？」<br />
<br />
類は・・・・というと、聞いてるのか聞いてないのか・・・首を捻っただけ。<br />
<br />
「類が伸びたのは中坊の時だよな。<br />
筍みたいにスクスク伸びて、あっという間に俺は抜かされて、ヤバイと焦ったぜ。<br />
さすがにもう止まってるだろ?」<br />
<br />
美作さんが口をはさむと、今度は道明寺が。<br />
<br />
「そうだ、類、サークルの奴と、お前、上手くコミュニケーションとれてんのかよ？」<br />
<br />
「まあね、みんな大人だから。」<br />
<br />
と類が返事。<br />
<br />
「へエ～、人嫌いの類がな～。」<br />
<br />
「言ったじゃん、大丈夫なんだって。<br />
フォーメーションの確認とか、気持ちが繋がってないとプレーできないのよ。<br />
意外に可愛がられてるって前に話したでしょ。<br />
先輩からヘッドバンドもらってたし、ねっ。」<br />
<br />
類に同意を求めて視線を配ると、私とは目を合わさないでビールを手にした。<br />
わざとそうしてるのか、続いて、お箸をもってお膳のものに手をつけてこっちを見ない。<br />
伏せ目がちの類、やっぱりこの場が気まずいんだ。</p>
<span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"><span style="color: #ffffff;" color="#ffffff"></span></span>
<p>時間が流れ、二次会の場所へ移動することになった。<br />
１５分、徒歩での移動。<br />
女子と男子になんとなく分かれ、私は桜子に引っ張られ並んで歩いた。<br />
<br />
「先輩、今日の類さん、ちょっと暗いですよね。」<br />
<br />
「・・っそ・そうかな・・・芸者組がはしゃぎ過ぎてるだけじゃないの。」<br />
<br />
「お二人、何かあったんですか？」<br />
<br />
「何を・・。」<br />
<br />
さすがに鼻が利くというか、鋭い嗅覚を持つ桜子よ。<br />
<br />
「別に良いんですけど、道明寺さんが気付かないかヒヤヒヤしてました。」<br />
<br />
「・・・サークルのことかな・・・気をつけるよ、ありがと、桜子。」<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:31:21+09:00</dc:date>
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  <item rdf:about="https://happyever.side-story.net/home/happyever28">
    <link>https://happyever.side-story.net/home/happyever28</link>
    <title>Happy Ever After 28</title>
    <description>
happyeverafter28

28.

成田空港の入国ゲートには人だかりができていて、後ろの方で待っていると、ざわめきと一緒に黒い巻き毛とサングラスが視界に入った。

コツコツコツ・・・数人の取り巻きと共に歩く姿が映画のシーンみたいに絵になっていた。
スマートな長身に、モデルのように格好よく...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter28</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>28.<br />
<br />
成田空港の入国ゲートには人だかりができていて、後ろの方で待っていると、ざわめきと一緒に黒い巻き毛とサングラスが視界に入った。<br />
<br />
コツコツコツ・・・数人の取り巻きと共に歩く姿が映画のシーンみたいに絵になっていた。<br />
スマートな長身に、モデルのように格好よくスーツを着こなす姿。<br />
サングラスをかけていてもその鼻筋からわかる男らしく整った顔。<br />
黙っていたらすごく紳士に見えるかも。<br />
かなり周囲の視線をあびている。<br />
<br />
「道明寺だ。」<br />
<br />
<br />
そして、一際背の高いその男は、まっすぐにこちらに向かって歩いてくる。<br />
<br />
「よお。」<br />
<br />
ガバッ！<br />
<br />
「うん、おかえり、道明寺ィ～、うわっ、ウングェ～エ～・・・。」<br />
<br />
アメリカ式だか、大きく腕を広げで思い切り抱きしめられて、頬っぺたにキスされた。<br />
ハグッてやつ、こんなに視線を集めた最中にどうよ。<br />
<br />
「あたしは日本人だ～、放せ！」<br />
<br />
「なんだよ、感動じゃねえのかよ。」<br />
<br />
「いや、恥ずかしいって。」<br />
<br />
「さ、行くぞ。」<br />
<br />
当然のように肩に手を置かれ、ご一行に混じりハイヤーまで、ズッコケそうになりながらついて行く。<br />
<br />
<br />
<br />
シートに座ってからも、道明寺はずっと私の右手を握ったまま離さず、窓の外と私の顔を交互に眺めては、テンション上がったまま、口がずっと開きっぱなし。<br />
日本は変わったな。に始まり、日本人はやっぱ小せえ！とか、みんな髪が黒くて同じ顔して変じゃねえか？だとか、まあうるさい。<br />
まるで孤島に幽閉されていて、帰還直後みたいにはしゃいでる。<br />
久しぶりなのはわかるけども、日本人でしょうが！そう日本人の顔が変わるかぁ！？<br />
<br />
<br />
「あんた、前からそんなおしゃべりだったっけ？」<br />
<br />
「おおっ？わりぃ、わりぃ。<br />
日本、何年ぶりだと思ってる？俺の母国だぜ、母国。」<br />
<br />
「・・・っと、３年もたってない？」<br />
<br />
「それにな、今回は少しゆっくり滞在できそうだしよ。<br />
牧野ともこうしてられる、最高！」<br />
<br />
大きな手でギュッと握られ、一瞬、高校時代もこうして握られたことがあったと思い出す。<br />
道明寺の目はずっと笑っていて、子供のように嬉しそうで、思わずつられて微笑んだ。<br />
そうやって喜ぶ分、日頃の激務が改めて浮かび上がる。<br />
<br />
高校まで、不良息子だったヤツがね。<br />
気楽な大学生活を捨て選んだのが、四六時中、仕事・仕事・仕事。<br />
アホで単細胞じゃなけりゃ、とっくに鬱になって帰国してるね、あんなストレス満載の環境。<br />
ここは安全、農耕民族の空気で平和、旧友もいて、米もおいしいよ、そりゃあ違う。<br />
しみじみ感じ入るでしょうよ、行きっぱなしだったもん。<br />
すっかり立派なニューヨーカーになって。<br />
<br />
私はというと、こんな男と並んでると、なんだか背伸びしたような気になるし。<br />
道明寺財閥直系のビジネス・オーラを発散されて、何から話そうか話題を探してるよ。<br />
<br />
<br />
「俺、これから出社するけど、お前どうする？屋敷で待っとくか?」<br />
<br />
「どうせ遅くなるんでしょ？明日は会えるし、今日は帰るよ。」<br />
<br />
「おう。」<br />
<br />
「皆、楽しみにしてるんだよ。<br />
何をさし置いても、絶対、遅れないで来てよね。」<br />
<br />
家の前に着くと、道明寺が顔を寄せてきた。<br />
キ・ス・・・キスされる？<br />
切れ長の強い眼差しに射られて、身体が固まって思わず目をつぶる。<br />
気付くと、反射的に鼻先を少しだけ左に避けていた。<br />
頬に一つキスを落としただけで、離れていく道明寺。<br />
<br />
<br />
「・・・だよな、真昼間だ、これで我慢しとくか。」<br />
<br />
「そ・そう・そう・・・よ///。」<br />
<br />
身体が固まってた。<br />
<br />
<br />
「じゃあな。」<br />
<br />
「うん、じゃあ、バイバイ。」<br />
<br />
道路に立ち、昼間の外気を浴びるやいなや、妙なザワツキが身体を駈けぬける。<br />
あわてて振り返り、シートにもたれる道明寺の後頭部を目で追いかけた。<br />
けれども、車はエンジン音も最小限で、見る間に小さくなっていく。<br />
警鐘のように打つ鼓動が耳に響いている。<br />
でも、大丈夫、落ち着かないのは久しぶりのせいだ、そう信じこんだ。</p>
<p>翌日の夜になる。<br />
西門さんと美作さんと類、滋さんと桜子と優紀がそろって、再会の宴はにぎやかだった。<br />
でも、誰がそんな大きな展開を迎えると想像できた？<br />
当事者さえ、ただ黙ってやり過ごそうとしてただけ。<br />
親友の久しぶりの帰国を温かく迎えて、日本の話を聞かせようと思っていたはず。<br />
<br />
どのみち、そうなるとしても、どうしてその夜なのだろう。<br />
もっと早くに、いや、もっと別の形で、お互いを傷つけず収まるように出来なかったのか。<br />
<br />
楽しみにしていた再会。<br />
私に会うため、一緒に過ごすため、ひたすら捻出した時間がもう最悪の無茶苦茶。<br />
私だって、またあの頃みたいに過ごせると思ってた。<br />
Ｆ４とＴ４で、めでたく浮かれた時間を。<br />
<br />
そして、二人の距離が埋まり、希望が新たに膨らむ・・・そんな夜になるはずだったよね。<br />
<br />
―――　悪いのは、全部、私。<br />
<br />
ああ、どこからやり直したら誰も傷つけずに済んだ？<br />
類の存在が、意識しない内にこんなに大きくなってるなんて、道明寺よりも・・・なぜ。<br />
<br />
<br />
悶々と答えを求めても、ただ時間が無慈悲に過ぎた。<br />
<br />
類と道明寺が決定的に割れた。<br />
それも、私のせいで・・・。<br />
どこから歯車が変わってしまってたのか。<br />
何からどう手をつけて、私は一体どうすればいい？<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:30:06+09:00</dc:date>
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    <title>Happy Ever After 27</title>
    <description>
happyeverafter27

27.

３月になり、いよいよ道明寺が帰ってくる一週間前になった。

あれから、類とはなんとなくギクシャクとして、今までになく口数が減った。

西門さんは都内の料亭で集合だ！と言い出し、久しぶりのＦ４集結と婚約お披露目の記念には芸者を呼ぶとか、お祭りみたいにはし...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter27</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>27.<br />
<br />
３月になり、いよいよ道明寺が帰ってくる一週間前になった。<br />
<br />
あれから、類とはなんとなくギクシャクとして、今までになく口数が減った。<br />
<br />
西門さんは都内の料亭で集合だ！と言い出し、久しぶりのＦ４集結と婚約お披露目の記念には芸者を呼ぶとか、お祭りみたいにはしゃいでる。<br />
私はパーティーの準備で、英語の集中講座やドレス選び、道明寺邸に足を運ぶ機会が増え、その週はバスケの練習を休んだ。<br />
<br />
道明寺の不在時に、どれだけのんびりさせてもらっていたか痛感する。<br />
ちょっと帰ってくるというだけで、まるで小さな嵐がやってくるかのような勢いで私の身辺が慌しく変わった。<br />
結婚して、行事に四苦八苦する姿が目に浮かぶ、やれやれ。</p>
<p>その夜は、バスケを休み、道明寺の家に行った帰りだった。<br />
黒光りのするハイヤーに送ってもらい、家に入る間際にメール着信・・・・・・類から！？<br />
<br />
『ちょっと出てきて。』<br />
<br />
小走りに外に出ると、白いポルシェにもたれたたずむ類がいた。<br />
<br />
<br />
「類？」<br />
<br />
「牧野に届けもの。」<br />
<br />
類は運転席を開け、紙袋を取り出し、それを私の目の前に差し出す。<br />
<br />
「何なの？」<br />
<br />
中身はヘアケア用品だった。<br />
<br />
「女物は牧野に渡せって、岩波さんから。」<br />
<br />
「ああ～、それでわざわざ？」<br />
<br />
メンバーの人から時々もらう販促用の品物だ。<br />
<br />
「うち、入る？」<br />
<br />
「いや、それより、ひまならドライブつきあって。」<br />
<br />
「今から行くの？」<br />
<br />
「そ。」<br />
<br />
類は軽やかに身を翻して助手席側に回り、ドアをあけた。<br />
<br />
<br />
<br />
車はすぐに首都高に入り、オレンジ色の灯をあびながら、いくつかの標識を右や左と選んでスイスイ進んでいく。<br />
ウインカーのカチカチ鳴る音が小気味よい程、滑らかにスピードにのって走る。<br />
レインボーブリッジが見えて、そしたら、海みたいに底が深そうな河の上にいた。<br />
左側は、圧巻の高層ビル群、窓から漏れる煌きが怖いくらいの数。<br />
右側は、お台場から続く暗い海に小船のあかりがポツポツ点り、まるで童話の景色。<br />
それぞれどんな人たちがいるのだかと思いを馳せた。<br />
<br />
「ねねっ、きれいだよ、類も見えてる？」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
<br />
高速を下り、薄暗い公道をひとたび走って着いた先は、人気のない東京港に面した埠頭だった。<br />
類は完全に車のエンジンを切り、何やらインディケーターを操作している。<br />
<br />
「ここ？」<br />
<br />
「うん、いいでしょ。<br />
岩波さんに教えてもらったんだ。<br />
女の子を落とせる場所なんだって。」<br />
<br />
「類が乗っかるなんて、意外。<br />
って、あたし？デートじゃないじゃん。」<br />
<br />
類の返事はなく、代わりに車のドアを開け外に出ていく。<br />
私も真似てみると、さすがに埠頭の夜はまだ肌寒い。<br />
<br />
「デートじゃなくても、牧野と一回来たかったから。」<br />
<br />
「光栄だね。」<br />
<br />
黄色いプラントの明かりと暗い海、無機質なコンテナと海へ直角に落ちるコンクリートの地面。<br />
私達二人だけしかいない、非日常的な空間にトリップした気になる。<br />
<br />
「ほら、夜でもちゃ～んと潮の匂いがする。」<br />
<br />
類は両手をポケットに突っ込んだまま背伸びして、クンクン鼻先を上にしてみせる。<br />
それから、私達はひとしきり対岸のプラント建物の話をした。<br />
そしたら、会話がプツリと途切れて、長い沈黙がやってきた。<br />
<br />
遠くの小船を見つめても、真横の類が気になって、次の言葉を待つ落ち着かない沈黙だ。<br />
<br />
<br />
<b>ハ～ックション　</b><br />
その沈黙を破ったのは私。<br />
<br />
<br />
「寒い？ゴメン。<br />
牧野に風邪ひかせるわけいかないな。」<br />
<br />
類はサッと私の背後に回り、自分のジャケットの前を開き、中に私を入れ抱えこんだ。<br />
<br />
「えええ～っ、るい！！何するつもり？」<br />
<br />
「こうやって、温（ぬく）めるの。」<br />
<br />
「・・・って、ちょっと！」<br />
<br />
「いいじゃん、まだ司はＮＹだし、誰も見てない。」<br />
<br />
「で・で・でも・・・。」<br />
<br />
「あ～、牧野の匂いだ。」<br />
<br />
「・・・///。」<br />
<br />
「帰ってきちゃうもんな、もう返さないとね。」<br />
<br />
<br />
ドキリとした。<br />
それって・・・それって・・・あの～。<br />
いつもの仲良し表現・・・だよね。<br />
<br />
こんな場所で、こんなに側で、こんなに強く抱きしめるからドキリとするんだ。<br />
少々身じろぎしても崩れない腕の囲い。<br />
<br />
でも、やっぱ近いよ、何のつもり？<br />
頭の中が混乱してきて、心臓が飛び出るくらいドキドキしてきて、返事に困った。<br />
シャワーを浴びた直後につけたのだろう、柑橘系のコロンの香りが濃厚に私の身体にまとわりついてくる。<br />
血液がドクンドクン流れる音が止まらなくて、類に聞こえてるにきまっていて、もう恥ずかしくて、死にそうだと思った。<br />
<br />
「・・・んも、か・かえすって、あたしは物じゃないんだから//。」<br />
<br />
「大事な預かり物だったからね。」<br />
<br />
大事な・・・大事な・・・・大事な・・・・・大事な・・・・・・<br />
&ldquo;大事な・・・&rdquo;って、強く胸に響くよ。<br />
何度も聞かされた免疫ある言葉のはずが？</p>
<p>「類、えっと・・・//。」<br />
<br />
「何？」<br />
<br />
「あのさー//。」<br />
<br />
「ん？」<br />
<br />
「あのさ・・・お母さん、・・・・ほら、あれ、もしかして、病気なの？」<br />
<br />
とっさの照れ隠しで、これまたやってしまった！<br />
一番心に占めてたことが端から飛び出る。<br />
もう、何言ってんだか、心太（ところてん）みたいな脳みそいやだ。<br />
<br />
「ゴメン・・・、いや、でもね・・。」<br />
<br />
「・・。」<br />
<br />
「ね、本当のところ、・・・・大丈夫なの？」<br />
<br />
「それ言う？折角、ロマンチックな夜なのに。・・・・まあ、牧野らしいけど。」<br />
<br />
身体を反転させようと動いたら、逆にギュッと強く抑えられて、海を見る体勢のままで拘束される。<br />
でも、言っちゃったもんはもう引き戻せない。<br />
ムードもぶっ壊す・・・恋愛に向いてないって、我ながら落ち込むけど。<br />
<br />
<br />
「誰からの情報？」<br />
<br />
「類こそ、どうして黙ってたのよ？」<br />
<br />
「牧野だって俺に隠してることあるだろ。」<br />
<br />
「は？意味わかんない。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「あのさ、ご病気はどうなの？」<br />
<br />
「さあね。」<br />
<br />
「さあねって・・・もう！頑固者。<br />
も～う、偏屈者、薄情者！言いなさいよ。<br />
自分が黙ってれば丸く収まるとでも思ってるでしょうけど、違うよ。<br />
側に居て、そんな顔みせられて、あたしが平気な訳ないじゃん。」<br />
<br />
「フッ・・・。」<br />
<br />
耳の上に類の顎がコツンとあたる。<br />
動かず数秒ジッとしてると、類の口から観念したような小さなため息と短い声が聞こえた。</p>
<p>「・・・あの人、死ぬんだって。」<br />
<br />
「！？」<br />
<br />
「ハァー・・・。」<br />
<br />
髪の中に短い吐息がふりかかるのがわかった。<br />
<br />
「そ・そ・それって、友里ちゃんから聞いたの？」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
「で、会った？」<br />
<br />
「まさか、・・・・・どうして今更。」<br />
<br />
「今更って、類！！自分を生んでくれたお母さんでしょ。」<br />
<br />
「もう、昔の人。」<br />
<br />
「生きてるよ！話もできるんでしょ？マジで後悔するよ、会わなかったら！！」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「でも、お母さんは類に会いたがってるんじゃないの？ちょっとは大人になりなさいって。」<br />
<br />
「自分勝手やって、１０年。<br />
一度も会ったことないのに、死ぬから会いたいって何さ。<br />
あいつの娘が、側に居てやれ、優しくしてやれって頼んできた。<br />
何、話すのさ。<br />
何も話すことないよ。」<br />
<br />
「本当は会いたいでしょ?<br />
死んじゃったら、どうしようもないんだよ、バカ。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「大バカ！」<br />
<br />
<br />
みぞおち辺りに組まれた類の指を解きながら、エイッと力いっぱい身体を反転させて、その勢いでまくし立てようとした言葉も空中でたち消えてしまう。<br />
<br />
見上げた類の目から、キラリと光る涙がこぼれ落ちていた。<br />
滴は細い一本の筋で、揺らめく海面と同じに対岸の電燈色を浴び、ユラユラと心もどかし気に揺れて見えた。<br />
あんまり綺麗でせつない瞳に、胸の中で色んな思いがあふれて出てくる。<br />
言葉が見つからないまま見つめていると、その壊れそうな瞳が私の暴れる瞳とぶつかって、類は小首をかしげながら口を開いた。<br />
暗くて憂鬱そうな海が、類を後押ししたのだろうか。</p>
<p>「俺の事がそんなに心配？」<br />
<br />
「そうよ！わかるでしょ？」<br />
<br />
「じゃあ、俺とこのまま一緒に居てよ。」<br />
<br />
「っ！？・・・う・ん・・・もちろん、いつでもどこでも付いてってあげるよ。」<br />
<br />
類は私の腰をぐいっと引き寄せた。<br />
うわっ。<br />
<br />
「こうやって、ずっと。」<br />
<br />
「え・・・？」<br />
<br />
「俺、牧野を放したくない。」<br />
<br />
「・・・ん？」<br />
<br />
「苦しいんだ。<br />
こっから居なくなるって考えるだけで、イヤだ。」<br />
<br />
<br />
類、何言ってるの？<br />
お母さんの話していて、どうしたら、そういう展開になった？何考えてるのかさっぱり。<br />
第一、道明寺と私・・・結婚するんだよ、応援してくれてたよね？<br />
道明寺に頼まれてるからって、いつもそう言って助けてくれてたよね？<br />
<br />
「る・い？あんた、ひょっとして、話を誤魔化すため言ってる？」<br />
<br />
悲しげな瞳はこちらを見据えていた。<br />
<br />
「バカ言ってないで、真面目に話そ。」<br />
<br />
両手で拳を作って、類の胸を突き放した。<br />
<br />
「ね？」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「・・・んもう、だから、お母さんの話でしょ。」<br />
<br />
類は黙ったまま、口を開こうとしない。<br />
ずっと悲しげな表情のまま、涙も拭わないまま。<br />
そして、自嘲気味な笑い声が漏れ聞こえた。<br />
<br />
「・・ハっ・・・だな、ふざけるなだよな。」<br />
<br />
「るい・・・。」<br />
<br />
「俺、最悪だよな～、マジで最悪・・・言うつもりもなかったのに。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「最低だ。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:28:11+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
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    <title>Happy Ever After 26</title>
    <description>
happyeverafter26

26.

バトンタッチのように、上沼さんがインフルエンザに罹った。
うつした！！
上沼さんへメールしたら返信がきて、まずはその内容に一安心。
ピークを越して食欲が出てきたから、もう大丈夫というものだった。

ならば、せめて精のつくものを作ろうと、聞き出した上沼さ...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter26</title>
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<p>26.<br />
<br />
バトンタッチのように、上沼さんがインフルエンザに罹った。<br />
うつした！！<br />
上沼さんへメールしたら返信がきて、まずはその内容に一安心。<br />
ピークを越して食欲が出てきたから、もう大丈夫というものだった。<br />
<br />
ならば、せめて精のつくものを作ろうと、聞き出した上沼さんのマンションに食材とともに押しかけた。<br />
<br />
<b>ピンポーン♪</b><br />
<br />
戸惑う上沼さんを尻目に、台所へ上がり込んで、買ってきた食材で作って食べさせると、食欲が回復したのは本当で、何でも食べてくれた。<br />
<br />
そして、いつの間にやら、話は友里ちゃんと類の話に。<br />
上沼さんは友里ちゃんの紹介者でもあるし、思い切って類との関係を打ち明けると、何度も「マジで？マジ？？？」って、ただただ驚かれる。<br />
<br />
お兄ちゃんみたいな上沼さんは何でも愚痴れよって言ってくれて、かなり聞き上手。<br />
一つ話すと止まらなくて、その後はちょっぴり肩の力が抜けて、そのうち、当て所（あてど）なく吐き出して、相槌が聞こえるのが心地よかった。<br />
類のことが心配で仕方ないって本音も話した。<br />
道明寺にも他のＦ２にも話せない話を、上沼さんは愚痴袋みたいに大きな心で聞き流してくれて、不思議とぶつけても大丈夫な人だってわかってた気がする。</p>
<p>「二人の関係、どうして隠してたのか、今考えても、腹が立ちますけどね。」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
「誰にも話すつもりないって・・・そんな捨てゼリフ、どんだけ気になると思ってんのか。」<br />
<br />
「ふ～ん・・・何を、だろな。」<br />
<br />
「友里ちゃんと話したくなさそうだし。」<br />
<br />
「両親とか家族のこと・・じゃないの？」<br />
<br />
そういえば、初詣の時、西門さんが言ってた。<br />
『類はまだ許してないよな・・・。』って。<br />
<br />
「類、お母さんと喧嘩別れしたのかも。」<br />
<br />
「とにかく、長いこと会ってないんだろうな。」<br />
<br />
「そこなんですよね。」<br />
<br />
「機嫌みて、聞いてみたら？」<br />
<br />
「最後にするから！って言って、頑張ってみたんですけどね。」<br />
<br />
「じゃあ、友里ちゃんに聞く？」<br />
<br />
「え～それはっ！！・・・、口固そうだし、ひょっとして、全ての原因かもしれないし。<br />
類を脅迫してる、とか・・・。」<br />
<br />
「まさか。」<br />
<br />
「ですよね、、ははっ。」<br />
<br />
「じゃあ、つくしちゃんの彼氏に聞いたら？小さい時から類君と一緒なら、家族のことも知ってるでしょ。」<br />
<br />
道明寺に類のことを聞くのはためらわれる。<br />
どうしてそんな質問をするのか？って聞かれるだろうし、なんだか後が面倒くさい。<br />
あわてて首を振った。<br />
<br />
「でも、他の知人に聞けるかも知れません。」<br />
<br />
<br />
西門さん達を思い浮かべながら、ふと視線の先に、室内の桟からぶら下がった物干し用の蛸足が目についた。<br />
<br />
「あっ！！上沼さん、それ脱いで！<br />
今から洗濯します、シーツも洗い替えありますよね？」<br />
<br />
「え～？？急にどうしたの？<br />
いいよ、そんなことしてもらわなくても・・・俺がやるから。」<br />
<br />
「いいえ、元はといえば、私が悪いんですから。<br />
ほら、すっきりしましょ。<br />
はい、脱いで！すいませんけど、ベッドから降りて着替えてきてください。」<br />
<br />
「本当に？洗うの？？」<br />
<br />
「はい！！洗濯くらい、ご遠慮なく。」<br />
<br />
「脱ぐの?」<br />
<br />
「ハイ！」<br />
<br />
腕まくりして、にっこり笑顔で答えた。</p>
<p>その晩は、久しぶりに道明寺とテレビ電話で話した。<br />
いつも唐突な道明寺だけど、そういう奴だったと強烈に思い出さされる破目に遭う。<br />
<br />
「来月、日本に帰れるぞ！今度は時間が取れそうだ。」<br />
<br />
「ウソっ！！帰って来る！？」<br />
<br />
「言っただろ。」<br />
<br />
「ホントにぃ～？？？」<br />
<br />
夏、会いに行った時、春先の一時帰国を調整していると言っていたけど、一度も帰ってきたことない訳で、遠い話と思ってた。<br />
<br />
「で、牧野、パーティーに同伴してもらうから頼むな。予定空けろよ！<br />
俺にくっついてろ、何も心配いらねえ。」<br />
<br />
「はあ～っ！！？？？」<br />
<br />
「んだよ、素っ頓狂な声上げて。<br />
取引先の社屋落成祝いだ、適当に話合わせて笑ってりゃ、事が済むって。<br />
牧野にはちょうどのもんだ。<br />
婚約者としてお披露目にいい頃だろうし、日頃の成果を発表してもいいんじゃねえか。<br />
マナー講習やってんだろ？英語も習ってんだろ？」<br />
<br />
そうそう、確かに受けさせていただいてます。<br />
道明寺邸に赴いて、時々ね。<br />
普通の家と桁ちがいの道明寺家の花嫁修業として、今もって続いておりますけどもね。<br />
<br />
「俺がちゃ～んとエスコートしてやっから、お前は笑ってろ、な。」<br />
<br />
「ひっ、ちょっと～。」<br />
<br />
「それから、一日丸々、ずっと一緒に過ごそうぜ。<br />
デートってのを。<br />
牧野の行きたい所、見たい物、食いたい物、詰め込んで。」<br />
<br />
「ふぇっ。」<br />
<br />
「やっぱ遊園地か？映画か？海か、海は寒いよな。<br />
チープなとこでいいんだとか、どうせキンキン言うだろ？」<br />
<br />
「・・・んまあ、そりゃ。」<br />
<br />
「日本の温泉もいいな・・・いや、温泉は不吉だ。<br />
なあ、流行のデートスポットはどこだ？<br />
連れてってやっから、リストアップしとけ。」<br />
<br />
「へ・・・。」<br />
<br />
「なんだ、その返事。おい、聞いてるのか?」<br />
<br />
「う・うん、聞こえてるよ、突然すぎて・・・頭が回んないだけ。」<br />
<br />
「あいかわらずだなあ、お前は。<br />
とにかく、そういうことだから。」<br />
<br />
どうにか頷いた。<br />
<br />
「じゃ、行くわ、またな。」<br />
<br />
道明寺の手がアップになって、すぐに画面から光が消えた。<br />
<br />
<br />
しぱらく真っ黒の画面を眺め続け、何も出てこない画面に向かってつぶやく。<br />
<br />
「ほ～・・・どうしよう。」</p>
<p>道明寺の一時帰国について、早くも美作さんからお祝いみたいなメールが入った。<br />
私は戸惑いの方が勝っている中、手放しで喜んでくれる仲間の安堵の深さに気付かされる。<br />
一緒に待っていてくれていたんだと。<br />
不甲斐ない私を安心させ、楽しませ、守っていてくれてたんだなあと改めて思う。<br />
西門さんも、美作さんも、類も、道明寺の古くからの友人なのだから。<br />
<br />
それなのに、こんな私って何?<br />
紛れもない落差に少しだけ罪悪感。<br />
道明寺の性急さにビビッてる。<br />
パーティーに同伴するって、いきなり過ぎないか。<br />
二人きりで過ごすって、泊まりってことで、やっぱ今度こそって意味か？<br />
<br />
戻ってきたら、まずはゆっくり二人の時間を取り戻して、それからちゃんと卒業して、ちょっとは外で働いて親孝行する。<br />
道明寺の横にいる自信が出てきたら、ゆくゆくは自然に心も大人になっていくと思ってた。<br />
<br />
まだ準備が出来てない。</p>
<p>そういう悶々とした気持ちをぶつけて聞いてもらった相手も上沼さんだった。<br />
ちょうど良いところにこの人が居たといっては失礼なのだけど、不思議とそういう相手だった。<br />
社会人だから、大人だから、遠距離恋愛の先輩だから、私と同じ年頃の妹さんが居るから・・・なぜ上沼さんなのだかハッキリわからない。<br />
こういう風に自然に話せる人だからというほか無い。<br />
とにかく、電話やメールで話す機会が増えた。<br />
<br />
<br />
その日は練習の帰りで、上沼さんに体育館の入り口横で呼び止められた。<br />
<br />
「つくしちゃん！」<br />
<br />
「はい。」<br />
<br />
すこし物陰になった辺りに誘導されて、上沼さんは口を開いた。<br />
声のトーンを下げて。<br />
<br />
「おう、英会話集中講座、頑張ってやってんだろ？」<br />
<br />
「はあ、まあね、しょうがないですもん。」<br />
<br />
「あのさ、類くんの家族のことは友達に聞けた？」<br />
<br />
「まだなんです、ばったり会うこともなくて。」<br />
<br />
「そう。<br />
いや、実は俺さぁ、妹に聞いたんだけど。」<br />
<br />
「何かわかったんですか？」<br />
<br />
「うん。<br />
友里ちゃんのお母さん、つまり類くんのお母さん、入院してるんだってよ。<br />
病気って、聞いてる？」<br />
<br />
思い切り頭を振る。<br />
<br />
「あの、どんな病気か・・・知って？」<br />
<br />
「わからない、それは聞いてないけど。<br />
友里ちゃんは頻繁に病院に通っているそうだよ。」<br />
<br />
そうだったんだ・・・。<br />
きっと、そのことを友里ちゃんは伝えて、それで。<br />
類のため息や寂しそうな表情が浮かんで、類のところへ駆け出したくなった。<br />
<br />
「つくしちゃん、色々あんだよ、俺らが立ち入るべきじゃないことも。<br />
もう、そっとしておけば？」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「話したくなったら話すって言ってるんだし。」<br />
<br />
「はい。」<br />
<br />
ズシンと身体が重く感じられた。<br />
<br />
たった一人のお母さんなのに、優しい類が心配しないはずないよね。<br />
重い病気なのかな。<br />
ふと、先日、お見舞いに来てくれた時の様子を思い出した。<br />
病人の私を看病する進を目で追って、寂しそうに類が言った言葉も。<br />
きっと、頭の中にお母さんのことがあったからなんだね。<br />
<br />
「上沼さん、やっぱり、あたしは・・。」<br />
<br />
「っ！」<br />
<br />
ちょうど類が着替えを終え、大きなエナメルカバンを肩にかけて、こちらに歩いてくるのと出くわした。<br />
類に気付いた上沼さんが明るい方へ一歩後ずさり、普通に声をかける。<br />
<br />
「類くん、ロッカールーム、今、込んでる？」<br />
<br />
「いえ、大丈夫です。」<br />
<br />
「あっ、そ。<br />
ってことで、つくしちゃん、またな。」<br />
<br />
類にも手を一振りする上沼さんは大股でズンズン歩いて行く。<br />
<br />
「あっ、上沼さん！後でメールしていいですか？」<br />
<br />
「ＯＫ！いつでもして来い！」<br />
<br />
上沼さんの返事が終わるやいなや、類は半身傾け尋ねてくれた。<br />
<br />
「邪魔した？話、もういいの？」<br />
<br />
「うん、もういい・・・・後でメールするから。　帰ろ。」<br />
<br />
私の口から、緊張気味な声が出た。<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:27:04+09:00</dc:date>
    <dc:creator>boa</dc:creator>
    <dc:publisher>NINJA BLOG</dc:publisher>
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  <item rdf:about="https://happyever.side-story.net/home/happyever25">
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    <title>Happy Ever After 25</title>
    <description>
happyeverafter25

25.

上沼さんの運転する車で自宅前に到着すると、すでに熱は急激に上がった後で、立ち上がるのもつらくフラフラ状態。

「あ・・りがとう・ございました・・・。」

ペコリと頭を下げたら、再び顔があげられないほど熱が回ってる。
世界がグニャっとゆがんでいて、小さく...</description>
    <content:encoded><![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>happyeverafter25</title>
<link href="simple3.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>25.<br />
<br />
上沼さんの運転する車で自宅前に到着すると、すでに熱は急激に上がった後で、立ち上がるのもつらくフラフラ状態。<br />
<br />
「あ・・りがとう・ございました・・・。」<br />
<br />
ペコリと頭を下げたら、再び顔があげられないほど熱が回ってる。<br />
世界がグニャっとゆがんでいて、小さく一歩づつ足を踏み出すので精一杯だ。<br />
<br />
「待って、部屋まで送るよ。」<br />
<br />
自宅に誰も居おらず、上沼さんが氷枕は～？とか体温計は～？とか叫んでいたような。<br />
ドアの閉まる音が聞こえて、私はそのまま目を閉じ眠りこけた。<br />
物音がして目を開けると、ママが側でタオルを交換してくれていた。<br />
<br />
「つくし。」<br />
<br />
「う・・、ママ。」<br />
<br />
「ごめんね、つくしにうつしちゃったんだね、ものすごい熱。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
目をもう一度つぶった。<br />
<br />
「病院行く？<br />
上沼さんって方がね、必要なら車出してくれるってよ。」<br />
<br />
目を開けると、ママが体温計を持ち上げながら微笑んでる。<br />
<br />
「はい、つくし、熱計ろ。」<br />
<br />
「帰ったの?」<br />
<br />
「そうよ。<br />
けど、いい人ね、チームの方だってね。<br />
氷枕や体温計に熱さましとか他にも色々買って来てくれてたのよ。<br />
お礼言っときなさい。」<br />
<br />
「そう。」<br />
<br />
そして、そのまま瞼の重みに耐えられず、再び目を閉じた。<br />
<br />
<br />
<br />
３日して、病院の薬のお陰で楽にはなっていた。<br />
<br />
「姉ちゃん、類さん来たけど、どうする？」<br />
<br />
類がお見舞いに来てくれた。<br />
<br />
「いいよ、入ってもらって。」<br />
<br />
類がひょこっとドアから首を出し、部屋に入ってくる。<br />
<br />
「ッス。」<br />
<br />
襟足を立てて着流した淡いグレイのハーフコートがよく似合ってるし。<br />
<br />
「どう？」<br />
<br />
「うん、少しまし。」<br />
<br />
「キャッ、冷た！」<br />
<br />
類はおもむろに私の額に手を当てると、まだ熱いじゃんって独り言みたいに言って、それから、勝手知ったように、年季の入った勉強机の椅子に腰掛け、持っていたナイロンサックを机の端に置いた。<br />
<br />
<br />
「外、寒そう。　ありがとうね、それ。」<br />
<br />
「どういたしまして。」<br />
<br />
「類は熱ない？平気よね？」<br />
<br />
「俺？・・・大丈夫だよ、この通り、どして、俺？」<br />
<br />
そう言って、類は白い歯をこぼしながら、小さく声をだしておかしそうに笑った。<br />
<br />
「俺はインフルエンザに罹らない・・・・・・ってつもりで来てるけど。<br />
特に、牧野ののは強烈そうだから、勘弁して。」<br />
<br />
<br />
微笑む類、そこに陽だまりがポッと生まれて、羽の生えたミニ天使達が飛び回りそうなくらい無垢に輝いて見える。<br />
エンジェル・スマイル、天使の微笑み。<br />
目で耳でその小さな感動を捕らえて、しばし呆然と見入ってしまう。<br />
はぁ～・・・まるで、心に養分が流れ込み、身体の中に薬が染みていくようで、病気で弱ってるところになおさら効果的だ。<br />
その声も、緩くかかったウェーブのようにふんわり軽やか、くすぐられ優しく溶かされて、ちょっとこそばい気分にさせられる。<br />
<br />
<br />
淡白くて優しい類に触れるたび、私は何かしらリカバリーを繰り返してきた。<br />
独特のその雰囲気が感染して、いつのまにやら角やら凹みやら色々取れて、しまいに元気が出た。<br />
何度も何度も、幾度も幾度も。<br />
私は類のこの微笑に滅法弱くて、どうやら簡単に反応してしまう。<br />
免疫は一生つかないみたいだ。<br />
そして、やっぱり類のことが好きだし、ずっと特別な人だと思った。</p>
<p>「姉ちゃん、おかゆ出来たよ～。」<br />
<br />
「あんがと、ねえ、ママは？」<br />
<br />
身体を起こし食べようとするやいなや、進にたしなめられる。<br />
<br />
「仕事行った。<br />
ちょっと、もうっ、食べんの待って。<br />
先に熱計ってから！ほらっ！ったく、姉ちゃんは手がかかるなあ。」<br />
<br />
体温計を押し付けられ、濡れたタオルや氷枕を素早く取り除かれた。<br />
熱は３７．９度。<br />
進が体温計を確認してケースに戻す、テキパキテキパキ。<br />
<br />
「じゃあ、はい、どうぞ！食べていいよ。&lt;br&lt;&gt; ポカリで良かったよね？<br />
おかゆがまだあるけど、ゼリーいただいたよ、類さんから。」<br />
<br />
「あっ、類、まだ居たんだ。」<br />
<br />
怪訝な顔の類と目が合う。<br />
あまりにも静か過ぎて、類が居ること忘れそうになった。<br />
サンキューと目配せすると、類は頬杖をつきながら黙って頷いた。<br />
<br />
<br />
「俺に気兼ねせず、食べて。」<br />
<br />
「うん、じゃあ遠慮なく。」<br />
<br />
どうやら、まだ残るらしい。<br />
何が嬉しくて、病人の部屋に居残るんだか。<br />
<br />
「全部食べたね。じゃあ、次はこれ。」<br />
<br />
進の右手に薬袋が、左手にはお見舞いのｾﾞﾘｰ箱と氷枕が載ったトレイが。<br />
<br />
「サンキュ。<br />
進、おかゆの具合、ちょうど良かったよ。」<br />
<br />
「当たり前、もう慣れたもんですよ。<br />
姉ちゃんは熱が高いと全く固形物受け付けないからね、昔から。<br />
病気になると、別人のようにしおらしくなるんだよねーー。」<br />
<br />
「あんたこそ、しょっちゅう熱出して、姉ちゃんー姉ちゃんーって泣いてたっつうの。」<br />
<br />
「昨日はうんうんうなってたのに、そんな口きけるならもう大丈夫。<br />
さすが、姉ちゃん。」<br />
<br />
「はっ？」<br />
<br />
「３９度もあったのに。」<br />
<br />
「っさい、まだ、熱くらいあるわよ！」<br />
<br />
「ハイハイ！」<br />
<br />
「偉そうに。ちゃんと恩は返しなさいよ。」<br />
<br />
「わかってますって、で、ゼリー食べるでしょ?」<br />
<br />
進は甲斐甲斐しく立ち回って、新しい氷枕を用意し、ゼリーの箱を開けて選ばせてくれた。<br />
<br />
「類さんセレクトだよ、おいしそうでしょ？」<br />
<br />
カラフルなパンテ・ルージュのフルーツ・ゼリーがたくさん入っている。<br />
ピーチのゼリーを選ぶと、進が蓋をはいでスプーンまでつけてくれた。<br />
<br />
「じゃあ、類さんも。」<br />
<br />
「いいから、俺の分もお食べ。」<br />
<br />
「え～っ！」<br />
<br />
いつもは喜んで我が家の団欒に参加するはずの類。<br />
今日は目を細め、ちょっと離れた場所からこっちを眺めるだけのお客さんのような。<br />
お見舞いって、元気を届けにくるもんでしょ。<br />
<br />
「変だよ、類。」<br />
<br />
「そうですよ。<br />
食べましょうよ、こんなにいっぱいあるんだから。」<br />
<br />
類は首を小さく横に振り、それから、振り払うように細く長いため息を吐き出した。<br />
その顔が沈んで見えたのは決定的で、見過ごすわけにいかない。</p>
<p>進が部屋から出て行くと、部屋に再び静けさが戻ってきた。<br />
<br />
「何考えてたの？」<br />
<br />
「ん？」<br />
<br />
「だって、類、さっきため息ついてた。」<br />
<br />
「ため息？ああ、考え事？<br />
牧野達見てると、俺に兄弟がいたら、どんな風に過ごしてたのかな～っとか考えた。<br />
一人っ子だもん、俺。」<br />
<br />
「ほんとに？はぐらかしたら、今度こそ絶交だよ！」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
類は私に向き直り、ゆっくりと首を捻って無言でいた。<br />
<br />
「進とあたしはいつものことじゃん。」<br />
<br />
私はベッドの上で背筋を正す。<br />
<br />
「言っちゃえば！」<br />
<br />
「何？」<br />
<br />
「頭の中がいっぱいになったから、あんなため息が漏れるんだ。」<br />
<br />
「ひょっとして、何か話したそうにムズムズしてるとでも？」<br />
<br />
「いや、・・・・・・だから、このところの類が、・・・なんだか心配なの。」<br />
<br />
「牧野の思い過ごしでしょ。」<br />
<br />
「あたしね、ずっと類の心のため息が聞こえる気がして、それがずっと気になってて。<br />
ふぅーってつらそうだから。<br />
こうして聞くのも、最後にするよ！」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
「ポロッと愚痴ればいいだけじゃん。」<br />
<br />
「他人（ヒト）に話して何か変わる？現実的に。」<br />
<br />
「他人って友達でしょ、冷たいな、もう！ 」<br />
<br />
「前からね。」<br />
<br />
ジロって睨んでくる類。<br />
<br />
「だからぁー、友里ちゃんと顔合わすのがいや、とかー。<br />
それでバスケ辞めようと思ってるってのも、まあ有り・・仕方ない、反対できないって覚悟もしてるしー、もう。」<br />
<br />
ガタッと椅子を引く音が響く。<br />
<br />
「熱もあるのに長居してゴメン、帰る。」<br />
<br />
「るい！」<br />
<br />
背を向けて立ち上がり、ドアの近くで再び振り返る類。<br />
<br />
「牧野、俺、誰にも話す気ないから。」<br />
<br />
微笑みはなく、代わりに寂しそうな印象が残された。<br />
<br />
「やっぱり、あるんじゃん・・・。」<br />
<br />
<br />
つづく</p>]]></content:encoded>
    <dc:subject>HappyEverAfter</dc:subject>
    <dc:date>2018-05-19T09:26:13+09:00</dc:date>
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